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STORY☆52 ページ2

10月2日の19時半を過ぎた頃。
今にも消えそうな程に頼りない街灯の中、Aちゃんと手を繋いで歩く薄暗い帰り道はこれから俺が進む道を暗示されている様だ。
塗り潰されるように暗くて息も出来ないくらい冷たい場所だったとしても、Aちゃんのくれる温もりを覚えていたら何処に連れて行かれたって大丈夫。
俺が居なくなってもAちゃんには笑っていて欲しい。
俺が居なくなってもしも泣いてくれるなら、Aちゃんを支えてくれる人が居て欲しい。
Aちゃんが辛くて苦しい時間を迎え立ち止まった時、手を引いて一緒の歩幅で隣を歩いてくれる人が現れて欲しい。
Aちゃんの感情がもしもまた色を失う事があったら、すぐにその色を取り戻すのは…俺が良い。
誰かなんかじゃなくて全部俺が良い。
Aちゃんを笑わせたいのも、支えるのも、手を引くのも、全部俺が良い。俺以外なんて嫌だ。
俺以外の奴がAちゃんの隣に立ってAちゃんに触れて、そんなの考えただけで嫉妬に狂いそうだ。
ホンマに俺って女々しいやんな。
あと4日しか無いのにいつまでも心の中はぐちゃぐちゃで、いつまでも堂々巡りの葛藤。

『送ってくれてありがとう』
口数の少なかった帰り道でさえ短く感じて、Aちゃんの家に着いてしまった。
それなのにいつまでも手を離さない俺に、『ゾム?』と心配そうな声音で俺の名前を呼ぶAちゃんの手を握りしめ、
zm「明日から3日間のAちゃんの時間、全部俺にくれへんか?」
足りない時間と残された時間の両方を埋めたいが為の俺の我儘。
そんな俺の我儘にAちゃんは優しく微笑んで、『いいよ。ゾムに全部あげる』と言ってくれた。
月曜日は体育祭と文化祭の代休だから明日から3連休だ。
10月6日の火曜日は俺の罰則の執行日だから、最期の思い出を全部Aちゃんで埋め尽くしたかった。
どちらも離そうとしない手。逸らさない切なげな視線。
『…ゾム』
瞳と同じくらい切ない声は、頭上で俺達を見守る星屑の中に溶けそうで、俺はそれを逃さない様に耳を傾ける。
『どこにも行かないで。一緒に居て…帰らないで』
弱々しい声で言われたその一言に、俺は自分の持っていた鞄が音を立てて地面に落ちたのも気にせずAちゃんを抱きしめた。

20時前のAちゃんの家の前、電気1つも灯されていないその家はきっと今のAちゃん1人で過ごすには寂し過ぎるから…俺はAちゃんと一緒にその家に入った。

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作品ジャンル:恋愛
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呉城 莉李。(プロフ) - さくさん» さく様コメントありがとうございます(*^^*)テスト期間はストレス溜まりますよね、お疲れ様です。番外編などでもう少し続いていくので、もしお暇はお時間ありましたら、お読みいただけたら幸いです(_ _*)) (2022年11月23日 10時) (レス) id: 7f13b99d76 (このIDを非表示/違反報告)
さく - ええ話ですね。つづきがあるかもですが、ひとまずよかったです!読むはじめて損しませんでした!テスト期間でイライラすることが多かったのですが素敵な話でスッキリしました。またちょくちょくみに来ます。大好きです。 (2022年11月22日 21時) (レス) @page22 id: 7d60a27ef9 (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ひよこさん» ひよこ様コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいお言葉ばかりで、私もひよこ様のコメントに泣きそうになりました。お時間いただきありがとうございます!もうすぐ完結なので、またお暇な時にでも覗いていただけましたら幸いです(_ _*)) (2022年10月21日 22時) (レス) id: 4f45722e46 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 初コメント失礼します。今日初めて読んだのですが、泣きました。号泣しました。こんなに心に刺さったのは初めてです。本っっっ当に大好きです、更新楽しみにしています! (2022年10月21日 21時) (レス) id: 82efcbbf1e (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ねう。さん» ねう。様コメントありがとうございます!私も自分で執筆していて完結に近付いていくのが寂しく思っていたので、そのお言葉とても嬉しいです(;;)!更新頑張りますね!ありがとうございます(*^^*) (2022年9月26日 7時) (レス) id: d747e32ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:呉城 莉李。 | 作成日時:2022年9月22日 12時

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