【wrwrd】我々国のお姫様。

▼STORY.11 ページ11

夢を見た。
雪が降る寒い寒い空の下。
ボロボロの服に痣だらけの身体。
通り過ぎる人は、私を見てはいけないモノのようにチラリと視線を向けては逸らす。
寒さと悲しさそして惨めさと寂しさで涙が止まらない私の前に、小さな影と手が伸びる。
「寒くない？僕と一緒においでよ」
差し出された小さな手に恐る恐る自分の手を重ねると、嬉しそうに笑って私を連れ出してくれる男の子。
久しぶりに触れた誰かの温もりは心地が良くて、私はその温もりを手放さないようにギュッと握った。
そんな懐かしい夢。

『んっ.....眩しい...』
あの後私は自室に戻り眠りについた。
懐かしい夢を見た割に心が重くない。
左手に温もりを感じ目を向けると、気持ち良さそうに眠る鬱くん。
きっとこの夢を見たきっかけは、あの日の鬱くんの優しい温もりを覚えていたからなのかもしれない。
私が両親に捨てられたあの日。私に手を差し伸べてくれたのは鬱くんだった。
サラサラの髪の毛に、綺麗な服を身に纏う彼に、幼いながらに自分の格好の惨めさに恥ずかしくなった覚えがある。
鬱くんが導いてくれたのが、皆がいるこの場所。
1番年上のグル氏でも3歳しか変わらないのに、皆大人に見えて全てがキラキラして見えた。
当時、両親が我々国を治めていたグル氏は、小さい頃から忙しい両親とは別に、このお城にお手伝いさんと共に暮らしていたらしい。
そこに様々な理由を抱え親元から離れた皆と暮らすようになった...そう聞いた。
病に伏した両親に代わりグル氏が我々国のトップに君臨したのは、ここ数年の話。
あの時、酷く傷付いた幼い私に手を差し伸べてくれた鬱くんと、何も言わずに優しく迎え入れてくれた皆のことを私は大切に思っている。
皆のこと家族のように大切に思っているからこそ、
私には余計にシャオちゃんが私に思っている同じ気持ちが芽生えないのだ。

ut「んんっ.....A起きたん？」
『うん。おはよう』
ut「ん、おはよ」
あの時から変わらない、目を細めて優しく笑う彼に再び懐かしさが込み上げる。
あの日あの場所で泣いていた私を救いあげてくれたこの手は、いつだって私の近くで私を支えてくれる。
あの日この場所で傷付いた私を助けてくれた沢山の優しさは、今だって十分過ぎるくらい私の元に注がれている。

『鬱くん、私あの日の夢見たよ』
ut「あの日の？」
『うん。私を連れ出してくれてありがとう』
ut「…いーえ」

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