拾弐話 ページ13
私がそう云うと、倉庫の奥から何かが倒れる音がして敦君とA君が肩を揺らした。
『今……其処で物音が』
「そうだね」
「きっと奴ですよ!太宰さん」
「風で何か落ちたんだろう」
敦君は落ち着かない様子で窓の近くまで行く。
「ひ、人喰い虎だ。僕を喰いに来たんだ」
『落ち着けよ、敦。虎が彼処から入れる訳ないだろ』
「どうして判るのさ!」
『其れは…』
ぱたり、私は本を閉じた。
「そもそも変なんだよ、敦君。経営が傾いたからって、養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃあないんだ。いや、そもそも経営が傾いたんなら一人二人追放した所でどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
「太宰さん。何を云って…」
月が、敦君を照らす。
「君が街を出たのが2週間前。虎が街に出たのも2週間前」
A君は静かに私と敦君を見ていた。
「君が鶴見川べりにいたのが4日前。同じ場所で虎が目撃されたのも4日前。国木田君が云っていたろう?『武装探偵社』は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。巷間には知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。その力で成功する者もいるが……力を制御出来ず、身を滅ぼす者もいる」
青い文字に包まれた彼の姿が段々と変わっていく。
「大方、施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう。君だけが解っていなかったのだよ。君も『異能の者』だ。
『月下の能力者_______』
虎になった彼が、私に飛び掛ってきた。
私が座っていた木箱が壊れる。
「こりゃあ凄い力だ。人の首くらい簡単に圧し折れる」
『敦!』
A君の存在に気付いたのか虎は彼の方に飛び掛った。
「A君、逃げろ!」
虎は、彼の目の前におりたった。
ゆるり、手を伸ばす彼。
『よしよし。もう大丈夫だよ』
敦君を安心させるような言葉を掛けながらA君は虎の頭を撫でている。
『でも、御免な。お前は1回、引っ込もうか』
「グルル…」
『敦を戻してやってください』
私は虎に近付き、額に触れた。
「…私の能力はあらゆる他の能力を触れただけで無効化する」
虎から戻った敦君が、彼の方に倒れ込む。
『おっと』
「おい、太宰!」
倉庫の入口から、国木田君が走って来る。
「あぁ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
「! その小僧。……じゃあ、そいつが」
「うん」
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匿名part2 - 浅間ってなんかハーフみたいで変 (2018年2月28日 21時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
赤影真未(プロフ) - 面白かったです!すぐに続編読みますね! (2017年10月19日 2時) (レス) id: 7f3c790d7e (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - 匿名さん» 申し訳ありません。まだその様なシーンを出していない為、忘れておりました。速攻で出しますのでご了承ください (2017年5月21日 19時) (レス) id: 5f9b98437e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - これは同性愛ですよね?BLフラグを立てて下さい。違反の対象となります。 (2017年5月21日 19時) (レス) id: 8d53b1880e (このIDを非表示/違反報告)
マロンクリーム - 面白いです!楽しみに待ってます(`・ω・´)頑張ってください! (2017年5月20日 5時) (レス) id: 9f03df5593 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:曉 x他1人 | 作成日時:2017年1月9日 23時