検索窓
今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:244,140 hit

拾壱話 ページ12

『敦!』


「まぁまぁ、国木田君。君がやると情報収集が尋問になる。社長にもいつも云われてるじゃないか」


何時もかよ、なんて呆れていると敦は渋々椅子に座った。


「それで?」


「………うちのいた孤児院は、あの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされて、倉も吹き飛ばされて……死人こそ出なかったけど貧乏孤児院がそれで立ちいかなくなって、口減らしに追出された」


悔しそうに、拳を握る敦。


「そりゃ災難だったね」


『敦、「殺,されかけた」って…』


「あの人喰い虎……孤児院の畑の大根食ってりゃいいのに。此処まで、追いかけて来たんだ!」


机を殴る(自分)が、誰も虎だとは思わねぇだろ。


「彼奴、僕を追って街まで降りてきたんだ!空腹で頭は朦朧とするし、何処をどう逃げたのか…」


「其れ、いつの話?」


「院を出たのが2週間前。川で彼奴を見たのが…4日前」


「確かに、虎の被害は2週間前から此方に集中している。其れに、4日前に鶴見川で虎の目撃情報もある」


太宰が、にこりと笑った。


「敦君、A君。此れから暇?」


「……猛烈に嫌な予感がするのですが」


「君が『人喰い虎』に狙われてるなら好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな」


「いいい、嫌ですよ!それってつまり、『餌』じゃないですか!誰がそんな」


「報酬出るよ」


ぴたり、体が止まる敦。


「国木田君は社に戻って、此の紙を社長に」


「おい、三人で捕まえる気か!?まずは情報の裏をとって_______」


「いいから」


太宰の、射抜くような瞳が俺を捉えた。


「ち、ちなみに報酬は…いかほど」


「こんくらい」


計算機を敦に見せると、「ついて行きます!」と云った。


『くすっ』




_______海の近くにある、廃倉庫に俺達はいた。


太宰は完全自 殺本と書かれた本を読んでいるし、敦はと云ったら木箱の上で三角座りしていた。


俺は敦の反対側の木箱に座って、林檎で遊んでいる。


「……本当に此処に現れるんですか?」


「本当だよ。心配はいらない。虎が現れても私達の敵じゃないよ。こう見えても『武装探偵社』の一員だ」


「はは、凄いですね。自信のある人は。僕なんか、孤児院でもずっと『駄目な奴』って云われてて_______そのうえ、今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で」


敦の顔に、影が掛かる。


「こんな奴が、何処ぞで野垂れ死,んだって、いや、いっそ喰われて死,んだ方が」


「_______却説、そろそろかな」

拾弐話→←拾話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (211 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
358人がお気に入り
設定タグ:文スト , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

匿名part2 - 浅間ってなんかハーフみたいで変 (2018年2月28日 21時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
赤影真未(プロフ) - 面白かったです!すぐに続編読みますね! (2017年10月19日 2時) (レス) id: 7f3c790d7e (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - 匿名さん» 申し訳ありません。まだその様なシーンを出していない為、忘れておりました。速攻で出しますのでご了承ください (2017年5月21日 19時) (レス) id: 5f9b98437e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - これは同性愛ですよね?BLフラグを立てて下さい。違反の対象となります。 (2017年5月21日 19時) (レス) id: 8d53b1880e (このIDを非表示/違反報告)
マロンクリーム - 面白いです!楽しみに待ってます(`・ω・´)頑張ってください! (2017年5月20日 5時) (レス) id: 9f03df5593 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: x他1人 | 作成日時:2017年1月9日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。