れもん哀歌

28-Do ページ28

デスクの影で 4人顔を突き合わせる

中「立つな 一旦逃げろ」

『え なに？なんの話？』

中「今の状況で任意同行に応じたら クソつまらん理由で拘留されやってもない罪を自白させられる」

『ｱｯなんか懐かしい』

東「やってないのに??」

中「死体に慣れてるから人が殺せるだの何だの訳の分からんクソでっちあげストーリーを密室で毎日毎日念仏のように唱えられてみろ クソほどの体力気力根性がなきゃ挫ける」

『何のことだかさっぱり分からないけど 夕子、体力気力根性持ってる？』

東「…どれも全然ない」

神「だからって逃げたりしたら…!」

中「バレないように誤魔化しゃいい 東海林が逮捕されたら 補助金どころかUDIが吹っ飛ぶ」


所長が狼狽えるのと同時に ラボの入口から声が聞こえた

逃げる夕子 本庁の人の前に押し出される所長

私は中堂さんに引き摺られるように所長室に入った


『ねぇ 何があったの?私系ちゃんが溜めた書類と鈴木さんの件の始末書と合同班の書類整理でなんっっにも知らないんだけど』


系ちゃんは面倒くさがりながらも丁寧に説明してくれた


『へぇ〜大変だねぇ〜』

中「他人事だな」

『だって他人だもん 友達でも何でもない ただの同僚』

中「…そうか」

『あ 私はそろそろお昼休憩に行ってきます』


すっかりお昼休憩を取るのを忘れていた

白衣を脱いで上着を羽織っていると

後ろから声をかけられた


中「俺も行く」

『わかりました』


久々にふたりきりになれる

るんるんで財布を持ってラボのある西武蔵野研究センターから出た


『あっ！早くしないとランチ終わっちゃう！』


系ちゃんの手を握って走り出す


『うわっ』

「あっ すみません!!」


横断歩道を渡ろうとした時

正面から走ってきた女性とぶつかった

その女性は私の顔をまじまじと見ると


「みつけた」


掠れた小さな声で呟いて

人混みの中に消えていった


その声をどこかで聞いたことがある気がして

違和感を抱えたまま 行きつけのレストランへ向かった






ラボで相変わらず書類仕事を続ける


picon!!


【外部からメールを受信しました】


突如画面に映し出された文字


『外部…？なんだろ…？』


【開く】をクリックすると差出人不明のメールが表示される

アドレスに見覚えはなく 件名は「やっと見つけた」

文章はなく 添付ファイルがはられていた


『ひっ…!!』


画面に映されたのは 暗い室内

真ん中には椅子に座った女性

その人は 私だった

29-Do→←27-Do

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す