奏 (ページ4)

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3話ページ4

「．．．止まれ！」

先程まで余裕を浮かべていた太刀川さんが、その様子を少しだけ緩めた。私としてはいつもそうあって欲しい。

「なるほどそう来たか。」

太刀川さんはニヤッとしてそこにいた迅さんにむけて警戒心を向ける。

「太刀川さん久しぶり。みんなお揃いでどちらまで？」

本当は未来予知の副作用(サイドエフェクト)でわかっているはずなのに聞くところが迅さんのいやらしさを感じる。

「うおっ迅さんじゃん。なんで？」

「よう、当真。冬島さんはどうした？」

「うちの隊長は船酔いでダウンしているよ。」

なんとなく察していたが、当真先輩は今の状況を察していないようだ。ちなみに太刀川さんでわかることがわからなかった場合、かなりの問題があるらしい。

「余計な事をしゃべるな当真。」

いやそうですよね風間さん。と心の中で手を合わせた。多分冬島さんもかなり苦労しているんだろうなって苦笑してしまった。

「こんな所で待ち構えたってことは、俺たちの目的もわかってるわけだな。」

「うちの隊員にちょっかい出しに来たんだろ？」

こっちは「ちょっかい」ではないんですけどね。おそらく、この作戦は迅さんの中で失敗するんだなあって勝手に予想してしまった。いや、迅さんのことだからそうやって思わせるのが目的なのか？考えるのはやめよう。

「最近玉狛の後輩たちはいい感じだから、ジャマしないでほしんだけど。」

「そりゃ無理だ。……と言ったら？」

「その場合はしかたがない。実力派エリートとして可愛い後輩を守んなきゃいけないな。」

迅さんはそう言って風刃を手にかけた。

「なんだ迅。いつになくやる気だな。」

迅さんらしくはない。実力突破なんて迅さんらしい考えではない。何を考えているんだこの人は？それを考えるのは私ではなく、他の人がやる事だ。

「おいおい、迅さんと戦う感じ？」

いやいや今気づいたんかい。と私は心の中でツッコミを入れる。当真さんをバカにするわけではないが(しているが)この人は良くも悪くも空気を壊しにかかってくる。

「『模擬戦を覗くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる』隊務規定違反で厳罰を受ける覚悟はあるんだろうな？迅。」

風間さんはそう怖い顔で迅さんを問い詰める。

「それを言うならうちの後輩だって立派なボーダー隊員だよ。」

「へえ……。」

私は口元を緩めて迅さんを見た。