奏 (ページ3)

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2話ページ3

音色のない狭い遠征挺の中は暇で溢れていた。もし暇だとバレていたのなら風間さんに「勉強しろ」と言われかねないのでそっと女子部屋でオペレーターの人達とお茶を嗜んでいた。

「Aちゃん三門市まであと2時間だってー。」

「わかりましたー柚宇さん。」

2時間。一体どのぐらいの速度でこの舟が動いてるのか分からないがあと少しというのは確かだ。

「あー疲れたー。」

私は伸びてぺたっと床にひっついた。ひんやりしてて気持ちいい。ベットもまあまあ硬いから実際床と変わらないだろう。寧ろ床の方がひんやりしていてベットよりいいまである。

「おーい涼風……ってなんで床で寝てるんだよアホ。」

「えー？ひんやりしていて気持ちいいですよ出水先輩。」

どうやら私は寝過ごしていたそうだ。肩周りが寝違えたせいか若干痛い。寝ぼけながら私は出水先輩を見上げた。

「だとしても寝ねーよ普通！」

そうやって出水先輩に起こされて私は遠征亭を出た。

「いずみん荷物もってー。」

「わかりましたー柚宇さん。」

さりげなーく、柚宇さんがいずみんに上目遣いで荷物持ちを頼んでいた。まあ、オペレーターの荷物なんてそんなにないし、軽いもんだ。

「いずみんおんぶー」

「しねーよバカが。」

こっちは遠征で疲れてるんだから、少しぐらい気を利かせてもいいんではないか？そう思いながら私は出水先輩に睨みを利かしながら遠征亭を降りた。

なお、出水先輩はそれには気づいてない。

「出水、涼風、遠征帰宅後早々黒(ブラック)トリガーと対決するぞ。」

生き生きとした太刀川さんの声が隊室中に響く。てか、うるせえ。

「どんな黒(ブラック)トリガーなんですか？太刀川さん。」

「お前は行かないぞ。唯我。」

太刀川隊にはもう1人隊員がいる。唯我だ。私と同い年であり、この隊のお荷物。詳しいことは知らないがなんか成り行きがあって太刀川隊に来たらしい。

「で、どんな黒(ブラック)トリガーなんですか？太刀川さん。」

出水先輩が唯我と全く同じ質問をした。まあ隊員に詳細を知らせるのは当然の事だ。扱いの差は置いといて。