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10.セピア色の哀に彼は涙する ページ11

「小さい時の記憶がそんなに有る訳じゃないが其れだけは覚えてる。まぁ、当時幾つだったかって聞かれても答えられないけどな。

…俺は、其奴の親父に直談判してよ…

“仕方無く”ってのが正しいンだろうが、どうにか側に置いてもらって、俺としては護ってるつもりだった」


そんなセピア色であろう過去を唯ポツリポツリと話す中原さんの声が次第に震える。

(若しかして泣いてたり、する…?)


「ある夜、“どうしても眠れない”って其奴が言うから、俺達は使用人の目を盗んで外に出た。

其の日は丁度宴会(パーティー)で、“良い子は寝る時間だ”って彼女と俺は他の部屋に追い出されてたンだよ。

…彼奴は溜め息ばっかり吐いてたなァ…」


そう、懐かしそうに空を見上げるが矢張何とも言えない表情をしていた。



「…外を適当に歩いて、直ぐ戻るつもりでいた。

満月が出てて、綺麗だって話してたとこに其処を狙ったヤツが、脇道から、やけにゆっくり歩いて来たンだよ。それも、ガタイが良くていかにもって感じの男が2〜3人」

「…すいません。私が“ボーっとしてた”なんて言うから…」


私は無理して話さなくていいと言おうとしたんだが、其れより先に、


「否、いい。手前が気にする事じゃねェ。俺が勝手に駄弁ってるだけだ、適当に流しとけ」

彼はこれでもかとニッコリ笑う。




其れは過去の自分を嗤っている様で、一番辛そうに見えた。


「…あの時の俺はあっという間に吹っ飛ばされて何も出来ない儘やられてよ……気を失って、気付いた時道端に倒れた彼奴は既に手遅れだった…」




本当に泣いているのか、中原さんは帽子を目元が見えなくなる位深く被って、また無理矢理笑う。




「死ぬ直前に、それでも笑ってくれた彼の事は今でも忘れられねェ……」


帽子の所為で隠れてしまっている瞳から流れた涙が、スッと一筋、線を描いたのを確かに私は見たが、次に元通り被り直した時には、何時もと同じポート・マフィア幹部の中原中也が居た。



「ほら、帰ろうぜ」


今度は普段と変わらずに笑った彼を見て、なんて表したら良いか分からないけれど、胸がグッと強く締め付けられる想いがした。

11.桜桃酒→←9.素敵帽子の昔話



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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
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ミリン - やばい!めっちゃ続き気になる〜 (2019年10月20日 19時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
kotoha - ミリンさん» 美味しいですよ〜 好みによりますが、最初はお砂糖と珈琲の量を1:1で入れて、バランスとってみて下さい! (2019年10月1日 20時) (レス) id: bf2849b969 (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - コーヒーの淹れ方参考にします! (2019年10月1日 19時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - 続きが気になる〜!! (2019年9月12日 6時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - 最新話も面白かったです!続き待ってます! (2019年9月5日 22時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kotoha | 作成日時:2019年7月31日 10時

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