裏切りのお酒2 (ページ8)

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寝室に入り、閉じた扉に寄りかかりながら腰を下ろした。

腰を下ろしたというか、腰が抜けた。

心臓がドクドク音を立てている。

視線を足に下ろすと、さっき降谷さんが甘噛みしたところがほんのり赤く染まっている。

震える手を口元に寄せて、息を吹き充てる。

落ち着け、A。

私が愛している人は、牟呂聖。

降谷零は、同期であり、上司。

それだけでいいはずだ。

私は結婚している。

だから、本当は夫ではない男を家に入れるなんてことは、ありえない話だ。

そんなことを分かっていながら降谷さんを招き入れた私は、最低な女だ。

降谷さんが家に入ってきたとき、抵抗も何もなかった。

2人きりの時間は嫌いじゃなくて、むしろ心地よかった。

今、冷静になって考えると、私すごくいけないことをしている。

聖さんになんて説明をすればいいのか。

ふと、窓を見ると写真盾が目に入った。

『あれ、写真ってここに置いたっけ』

“地震でいろんなものが落ちちゃって。場所が変わってるものがあるかもしれない”

『そっか、地震で落ちたのをここにおいてくれたんだ』

手に取り、ベッドに横になって眺める。

卒業式終了後に引っ張られて、構えられたカメラに無理やり向かされたんだっけ…

今は亡き人たちに囲まれている苦笑いの私。

『もう少しちゃんと笑っていればよかったなぁ』