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「俺、1か月くらい新人研修に付き合わなきゃいけなくて」
『1か月も?』
「しかも場所がイタリアなんだ」
『海外なんですね…』
「心配?」
『うん…、いろいろ』
「連絡入れるよ」
『気を付けてね』
「了解」
それから数日後、彼はイタリアに旅立った。
「藤本、最近元気ないけど何かあったか?」
『先輩…、夫が研修で1か月帰ってこないんです』
「あ、ごめん。牟呂だったな(笑)新婚でそれはつらいよなー」
何かあればいつでも言えよー と声をかけてくれた先輩は、報告書に追われる私にコーヒーを入れてくれた。
「悪い。泊めてくれ」
『…は?』
明日の休日は何をしようか考えながら夕食を作っていると、チャイムが鳴った。
モニターには知った顔が映っていて、何事かと玄関を開けた第一声がこれだ。
「安室がへまをやらかしてな」
『同一人物でしょ』
「安室のファンが、安室の家を突き止めて家に入れないんだ」
『珍しい失敗ですね。何かあったんですか?』
「…あったといえばあったな。心ここにあらずなことが」
『あの降谷さんが。へー』
「…」
『降谷の家はどうしたんですか』
「…とりあえず入れてくれ」
「お前、料理できるんだな」
『一応妻ですから』
「…苗字、なんだったかな」
『牟呂(むろ)です。牟呂A』
「ほぉー」
『降谷さんは?結婚の予定とかないんですか』
「僕は職業柄、個人を守ることは難しいからな」
『そう』
「だが、君を見ていると結婚もいいなと思えてくるよ」
『刺激になりました?』
「いい意味でも悪い意味でもな」
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作者名:エナガ | 作成日時:2018年10月31日 20時