六十二枚目 ページ16
Aside
必死な顔して、息を切らした兄が私たちの元へ走ってくる。
そして私に伸ばされた緑間の手を、強く叩き落とした。
「ばかッ、兄貴!緑間はっ!」
「君、なに?」
いつものバカみたいに明るく騒がしい兄の声ではない。
地の底のように低い、ドスの聞いた男の声。
怒っている、誰からどこから見てもわかる。
「連絡しても返事来ないし、時間も遅いし、心配して探しに来たんだけど。
…Aに、何をした」
「兄貴っ、やめて!ほんと違うから!」
さっきまで動かなかった脳と体は、兄が来たことによって再び動きだした。
力の入った兄の腕をつかみ、こちらに意識を向ける。
「緑間は同じ部活で、いろいろあって、暗いしって、途中まで送ってもらってたの!緑間、兄貴来たから、ここまででいいよ。ありがとう、…ごめん」
「…ああ、わかった。…気にするな」
緑間はそう言って来た道を戻って行った。
今だに緊張が解かれていない兄の腕、兄はじっと緑間が帰っていく姿を見ていた。
「…帰ろ」
「…帰ろう」
ピリッとした空気。
私はそっと兄の腕から手を離した。
帰っていく間、私は今日会ったことを珍しく話す。
すると兄は納得し、いつもの柔らかい雰囲気に戻った。
「そっか、彼の妹を…。やっぱりAは優しい心を持ってるね。…あと彼にはちょっと申し訳ないことをしてしまった…」
「また私から謝っとくから」
「ごめぇん…。…でもなんであんな二人で突っ立てたの、なんかされたのかと」
「…ただ、私が取り乱しただけ。誘拐の話題を自分で出しちゃって、…緑間に昔誘拐されたのかって、言われちゃったから」
「え」
驚き足を止めた兄。もうすぐ家につくから足は動かしてほしい。
「他は?何か言ったの」
「いうはずない」
「そ、っか。…A」
「……」
「Aは何一つ悪くない、悪くないんだからな」
「……。さっむ、早く家帰ろう」
兄貴はもう一度私の名前を呼んだが、私は振り向くことはなく家まで歩いた。
家に着いた私は自室に行き、押しピンを家から探し出して部屋の壁に結衣ちゃんから貰った絵を飾った。
そして緑間母にもらったお菓子の袋を開け、口に運ぶ。
…うん、凄くおいしい。
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時