五十七枚目 ページ11
Aside
話を終えた私は、人通りの多い道を通って家に帰る。
帰宅するといつも通り騒がしく兄が出迎えてきた。
兄は部活を引退している身なので、たまに顔を出す日以外は私より先に家に帰ってきている。
ただいま、とだけ言って騒がしい兄を横切り手洗いうがいを済ませた。
そして二階の自室に行き、かぶっていた布団を脱ぎ捨てベッドに体を放る。
「幼少期の記憶、ね」
小学三年生か四年生の頃、色々あったせいでその前以降の記憶はほぼうろ覚えだ。
耕ちゃんのことを覚えていたのは、きっと、バスケが関係してたからなんじゃないか…なんて。
少しすると下から兄が私を呼ぶ声が聞こえた。夜ご飯が出来たらしい。
私を過保護に守り、二歳しか違うのに親代わりになってくれている兄貴。
その心の奥底では私を深く憎んでいるんじゃないか、…そんな皮肉なことを思ってしまうせいで素直になれない。
――
―
11月に入り、比較的過ごしやすい気温になった。
被っている布団も丁度よく私に温を与えてくれて、この季節は大好きである。
マネ業に勤しみ、さつきちゃん以外のマネ…明美ちゃんと、美咲ちゃんというマネとも少し仲良くなった。
二人は口を揃えて言う。
「「案外しゃべれる」」
「光栄でぇす」
褒めてるから、と笑いながら言ってくるくらいは仲良くなったと思う。
そんな様子をさつきちゃんは嬉しそうに見てたっけ。
思ったんだけど、帝光中は校内を出た練習試合が多い気がする。
だからといって私がそれについて行くことはない。
他の三年生のマネさんや二年生のマネ、プラス桃井ちゃんが行くくらいである。
そんな練習試合があった次の日の部活終わり、青峰に呼び止められた。
「なあ山梨」
「ん〜?」
「お前いつも帰りどこ行ってんの?」
「普通に帰ってるけど」
「ぜってぇ嘘だ!」
いつも帰るタイミングをずらしてるからそんなことを言ってくるのだろうと察す。
猫たちのことは言えない、できるだけ人に知られないのに越したことはないしね。
「マジでなんもない」
「ふ〜ん、あっそ」
これ以上自分が求めている情報が手に入らないと知った青峰は拗ねたように背を向けた。
私も背を向け、さつきちゃんにいつも通り先帰るねと言い猫の元へ行く。
餌をあげ、少し戯れた後に家路についた。
すると遠目にうずくまる子供の姿が。
「あれってもしかして…」
見覚えがある緑色の髪。
その子供は溝に手を突っ込んでおり、取れない〜などと声を上げていた。
「結衣ちゃん?」
「…布団の妖精さん!」
ではないんよ。
.
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時