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Aside
「栃木……」
「捨てるわけじゃないよ。…私はこれからもケンを思い出す、けどそれは一人の大切な人間として。もう、ケンはいないんだ、一緒の時は過ごせないんだ」
そんなこと当たり前だけど、どうしても私は割り切れなかった。
でも、今度こそ、本当に前を見て歩かなきゃ。
夢の中で言われたように、たまに後ろを見たっていいから、どうせ後戻りなんて出来やしないんたから。
だったら立ち止まるより、前へ歩かなきゃ。
「降谷が私の笑顔を守ってくれるなら、私は降谷の笑顔を守る」
ピンを外し自由になった前髪が、風でそよそよと揺れる。
「私と一緒に時を過ごしてくれますか」
へら、っと笑って頬に添えられた降谷の手をぎゅっと握る。
すると降谷もへにゃっと綺麗な顔を崩したかと思うと、その顔を私の顔に近づけ、ちゅっ…と優しく唇を合わせた。
喧嘩が始まった、あの時のようなキスではなく、本当に優しく。
「もちろん」
顔を見合わせ、お互い恥ずかしくなってらしくないふにゃふにゃの笑顔を浮かべる。
恥ずかしくても一向に離す気のない、私と降谷の片方の手。
「…こんな所でイチャついてたら怒られるかもしれないな」
「誰に?」
「ハギに」
くすっと笑う降谷に、そんなことないよと返す。
彼は、恐ろしいほどに優しいから。
その優しさに甘えるのは私の悪いところ、ズルいところだけれど。
彼はきっと私たちのことを、祝福してくれる。
「っわ!」
「と、」
その瞬間、ビュオっとさっきまで吹いていなかった強い風が吹き、私の背を押す。
その拍子に降谷に倒れかかってしまったが、それを降谷が受止めた。
「んー…これは…」
「ケンが喜んでるのか、怒ってるのか、どっちかだね」
「…は、はは」
引きつった笑みを零す降谷が面白くて、思わず笑う。
そんな私に降谷はそのまま抱きついてきて、また私の首元に顔を填めた。
「……絶対に、幸せにするから」
「……私も、私なりに降谷を幸せにする」
1度離れて、目をじっとみつめる。
やっぱり今の状況が小っ恥ずかしくて、二人でまた、声を出して笑った。
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こたきんぐ(プロフ) - ありばばさん» こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!泣いてくれたんですね…少しでも心動かせたみたいでマジで嬉しいです!番外編の方もし未読でしたら、お暇の時にぜひ! (2022年8月12日 20時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
ありばば - 良作をありがとうございます…!本当好きです、マジで、マジで!!一時はどうなるかとハラハラハラハラしてました泣きました。もっかい見ます (2022年8月11日 11時) (レス) @page47 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - \(^o^)/さん» もったいないお言葉です…。ありがとうございます!笑 (2022年1月23日 2時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
\(^o^)/ - 神作品とはこのこと、、、!!!679を680にしてやったぜ! (2022年1月19日 23時) (レス) @page47 id: 111ab3751f (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 眠夢_さん» ええありがとうございますー!!笑笑 その水拭いて差し上げたい…( ˘ω˘ ) 少しでも心動かせたようでよかったです笑笑 (2021年10月4日 15時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2019年4月5日 11時