37億 ページ39
Aside
「ここ、か」
伊達の字が掘られている墓石にそっと触れ、ごめんと呟く。
風見さんに軽い気持ちで絡んで行ったのに、こんなことになるなんて。
でも良かった、今より遅いタイミングで知るより、今の方が。
伊達は、凄かったねほんと。
警察学校の時いつも私と降谷と張り合ってさ、楽しかったな。
「…お前も先に行くんかーい、って」
バシャーッとバケツに入れておいた水を墓石にかぶせ、墓石を洗う。
突然のことでお線香は持ってきてないので、丁度買ったつまようじとリボンを外したお菓子セットをお墓に供えた。
つまようじ、また買わなきゃな。
「あと二人だけになっちゃったじゃーん。ほんっと…バカ」
私のバカ野郎。
伊達が死んだなんて今の今まで知らなかった。
最低だよね、糞野郎だよね。
一人八億当てて喜んで休暇取って、いろんな人に迷惑かけて。まあまだ懲りずに休みますけど。
「なんで、私達を置いて皆逝っちゃうんだろーね……降谷」
「…そうだな」
今さっき来た降谷に背を向けたまま話しかける。
多分、風見さんが降谷に連絡とったんだろう。
だから降谷は少し息を切らしながら来て…。
あれ、黒の組織の仕事は?仕事抜け出したわけじゃないよな。
「組織の方は大丈夫なわけ?」
「ああ、ただの書類ミスだけだった。
…いつか、言おうと思っていたんだ」
「うん…。わかってるよ。降谷のことだし」
「……、栃木」
「なにー」
「俺は、死なないからな」
そう、いつもの何事もない降谷の声でさらっと言うものだから、思わず目がジワリと熱くなってきた。
やめてよ、なんで今そんなこと言うの。
泣かないように我慢してたのに、言わないように我慢してたのに。
「…だから、お前も死ぬんじゃないぞ」
「…わかっとるわっ」
降谷に先に言われてしまった。死ぬな、って。
私を置いて死なないで、って。
気づけば流れてる涙は止めようとしても止まらない。
伊達のことはもちろん、それを知らずに楽しんでいた己の愚かさが悔しくて。
ボロボロと流れて地面に落ちる水滴をどうにか抑えたくて服の袖を目元に当てる。
「帰れるか。…もう暗い」
「う、ん。降谷様様は明日も仕事だしねっ!」
「お前もバイトな」
「そーでしたっ」
涙声で返す私に、送っていく、と降谷が言うので甘えさせてもらった。
初めて乗るのに、なんだか懐かしさを覚える降谷の車に乗ってまた涙腺が緩む。
ぐすんと鼻をすすりながら、流れていく景色を助手席の窓から覗いた。
伊達との思い出は、どれも笑っていた気がする。
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ムニエル(プロフ) - ナイフ向けられて蹴った場合には正当防衛に当たりませんよ笑笑 (2021年12月23日 20時) (レス) @page11 id: fc3a6cbfb7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 明里香さん» 直しておきますね!ありがとうございます! (2019年11月2日 21時) (レス) id: 4d87c6d951 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 13話、「店長」とありましたが、ポアロでは「マスター」だと思います。 (2019年11月1日 9時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - かとりさん» これは私が完全に入力し忘れですねっ!!!やばいごめんなさい地理の知識無さすぎて泣きそう!!行きました!いろいろありがとうございます!! (2019年6月28日 22時) (レス) id: 4d87c6d951 (このIDを非表示/違反報告)
かとり(プロフ) - 主人公さん、日本一周で東北だけ行かなかったのでしょうか…?読み始めたばかりですが、既に面白く、どんどん読み進めさせていただきますね! (2019年6月28日 1時) (レス) id: 2c38dfc0c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2018年6月23日 20時