13 ページ13
「あれ、僕が負けたって思ってる? 安心して、お兄ちゃんは勝ったよ。全部ユウちゃんにあげたんだ。言えば一つくらいわけてくれると思う。学校の差し入れに持っていくって言ってたし。だからって食べすぎはダメだよ。手荷物増えるから避けてたけど、ああいうのもたまにはいいね」
「だから優人、歩いて」
「猫かぶりの鏡だ。僕には真似できないね」
優人はどんなときでも手放し、片手運転をしない。予期せぬことで手荷物が増えた場合は必ず自転車を押して帰っていた。急いで帰る必要が彼にはない。優人の両親は共働きなので帰りが遅いのだ。
門扉の前で優人の帰りを待った。勝負が決まったあとすぐに別れ、兄は真っ直ぐ家を目指さず長い時間ぶらぶらしていたらしい。そのおかげで優人を待つ時間は短かった。
かごには大量のチョコ菓子が入った袋がいくつもあった。入りきらなかった分は片手で持っていた。兄を信用していないわけではないが、優人の無傷の顔としっかりとした足取りに安堵の息を漏らした。
「聞いてるだろうけど、ほとんどがカズちゃんが取った分。手塞がってるから手伝ってくれ」
差し出された分を受け取った。一つ一つは小さいが袋いっぱいになるとずっしりとしている。
玄関の照明が優人に反応して灯った。ただいまを言ってもおかえりの返事が、当たり前だがなかった。
リビングにお菓子を置くと優人が黙ったまま二階の自室に行った。手伝いが済んだからさっさと帰るのも失礼かと思い、優人を追いかけた。一応ドアをノックして中に入った。優人が制服のまま不貞寝していた。兄に負けたのがよほど悔しいのだろう。
「お菓子置いたから帰るよ。もし、晩御飯無いなら家にきてって母さん言ってたから」
「言うことはそれだけ?」手を後頭部で組み、優人は上半身をわずかに上げた。「飯なら心配するな。なんならAこっちで食ってけ。一人分も二人分も大差ないからさ」
「じゃあお言葉に甘えます」
「Aが自分の意思で俺の部屋に来るなんて変な感じだな。これも小学校以来か? 優しくしてもらえるならカズちゃんに殴ってもらえば良かった」
「よくそんな呑気なことが言えるね。殴り合いになりかねない雰囲気だったのわかってる?」
1人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遊藍 - ご返答を頂き、ありがとうございます。これからもちらほらと出没すると思います。 では、また。 (2014年1月7日 22時) (レス) id: 4e5e1697d1 (このIDを非表示/違反報告)
遊雪(プロフ) - 遊藍さん» いつもお世話になってます! こっちとあっちを両方とも見てくださりありがとうございます。私らしいと言ってもらえて嬉しいです。ここでもだらだら頑張ります (2014年1月7日 1時) (レス) id: a7ef94ea5a (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 来てしまいました!某・読者です。 確かに厳しいですね。オリジナルのタイトルに「嵐」も入れられなくて・・ お話、遊雪さんらしいと思ってしまいました。文脈も、はじまりも。気を悪くなさっていたらすみません・・・また遊びにきますね。 (2014年1月6日 3時) (レス) id: 4e5e1697d1 (このIDを非表示/違反報告)
遊雪(プロフ) - スラッシュはダメでスペースは大丈夫みたいです。どのみち見苦しさに変わりはありませんが。 (2014年1月5日 18時) (レス) id: f7aceeb3cf (このIDを非表示/違反報告)
遊雪(プロフ) - ワンピースはスラッシュ一つでも二つでもダメでした。スペースも許されませんでした。試し済みです。見にくさ改善のために行間開けます。黒羽さんご意見ありがとうございました。 (2014年1月5日 18時) (レス) id: a7ef94ea5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:加原佳奈 | 作成日時:2013年12月20日 23時