一話 忘れたとは云わせない ページ2
·
そう云った。
目が覚めた。何度か瞬きを繰り返し、ようやく現実味が湧いてくる。
そして、壁時計を見れば指定の時間から四時間経っていた。
ふぅ、と溜息を吐いて布団から出て着替えを始めた。
シャツに腕を通す。肌にピタッとする黒いズボンを履いて太腿丈の砂色のベストを羽織る。そして焦茶色の編上靴を履く。
長い灰色の髪を一つの三つ編みに結い、後ろに払った。
鞄に付いたベルトをズボンに着いているベルトループに通し、扉を開いた。
光が差し込む。
私の後ろには影が出来る。
扉に鍵を掛け、その場を去った。
指定の時間からすぎた時刻。
殺人があってなければいいのだけれども………
云われた指定の場所。
曲がり角に差し掛かり、足を踏み入れた瞬間。
発砲の音が響いた。何事。
目を丸くして見れば、黒い服装の如何にも怪しそうな集団が、と或る男を取り囲んでいた。私の獲物だぞ、其奴。
「手前、何故逃げンだ?あ"ぁ?」
「い、いや、あの、その、え………っと」
カツカツと靴音を鳴らして後ずさる男を追い詰めていく低身長の橙色の髪の男。
青ざめた顔で後ずさる男は、自分に向けられる拳銃を見てひぃっと声を上げた。
そして、橙色の男が拳銃を向けて発砲した。が、発砲された弾は軌道の上で止まっている。
「おい、どうなってる!?なんで弾が空中で止まってンだ!!」
『_____私が止めたから』
カツ、
靴音が響いた。
右手に緑の光を受けて浮かぶ砂時計を翳しながら、発砲された時に腰を抜かした男に近づいていく。
『やあ、私は石川A。却説、問題です!!』
「へ、」
『良いね、其の顔。君、何故この弾は止まっているのだと思う?』
笑みを浮かべながらしゃがみ込み、彼の視線の位置と合わせた。
彼は判らないと云った風に首を振った。
『莫迦な君に教えてあげよう。私の異能で弾を止めたんだよ』
「異能?」
そう、と頷いて立ち上がり、空中に浮かぶ弾を摘んだ。
私が触ればこの異能は解ける。位置を変えればもうその軌道に乗ることはない。
そして、右手に翳していた砂時計はサラサラと風に乗って消えていった。
と同時に肩を掴まれた。
「おい、手前は此奴の仲間か?」
振り返れば橙色の男が凄い睨みつけてくる。
男にふっと鼻で笑い、手を払い除けた。
『夏野由美、忘れたとは云わせない。アンタが殺した女の名だ』
74人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早夜(プロフ) - わにゆずさん» ありがとうございます!忙しくて放置していたら、もうすぐ1ヶ月経ってしまうところでした。近々更新しようと思ってるので待っててください!! (7月2日 11時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
わにゆず(プロフ) - がんばってください! (6月13日 21時) (レス) @page21 id: b8157db853 (このIDを非表示/違反報告)
志希 - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!頑張ってください!! (2023年3月16日 19時) (レス) @page14 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:早夜 | 作成日時:2023年3月8日 17時