さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ46)

今日:28 hit、昨日:3 hit、合計:16,326 hit

白雪姫　諏訪部大和ページ46

ちり、とした殺気が肌を刺激した。少しだけ構えたが、周りに気配は感じられない。
取り合えず、今この場にひよくんに危害成すものがいないと知れば安心だ。私は安堵した。ショルダーホルスターに銃を戻そうとしたが私の手は止まる。

いや、待てよ。
瞬間、私の脳裏に霹靂が走った。

「……ねえ、ひよくん。白雪姫って知っているかい？」にやり。意地の悪く笑いながら尋ねれば、困惑気味に「うん」と顎を小さく引いて頷いた。

「白雪姫……そう、白雪姫の物語は嫉妬に狂った母が林檎売りの婆に化け、そして毒林檎を差し出した。それで白雪姫は毒林檎だと知らずに食べ、瀕死の状態までに追い込まれる。だがしかし、王子による接吻で目覚めた……」あっているかな？
ひよくんにそう聞いてみれば「あってるよ」と云う。私は間髪入れずにまた口を開いた。

「だがね」

不思議そうに見てくるひよくんににっこりと笑みを作って見せた。そして、左手にある銃を瞬時に監視カメラへと向ける。銃口が監視カメラを捉えた。

また口角を上げた。水晶越しにいる相手に読み聞かせる如く、一文字一句間違えないように丁寧に言葉を紡いだ。

「それがもし、全てを理解したうえであったなら？」すべて、白雪姫は紙片の上に紡がれた物語をしっていたのであれば？
ひよくんの目がぱちくりと動いた。酷薄とした笑みを監視カメラへ向けて浮かべる。

それは全て、水晶越しにいる君へ(・・・・・・・・・)向けて。

「白雪姫は全て知っていたのだよ。母が己を恨んでいることも、婆に化けて毒林檎を食させようとしていることも。
それを知っての上で、彼女は毒林檎を嚥下したのだ」

呆けるひよくん。
言葉を続ける。

「白雪姫は、婆を酷く警戒していた。物語(シナリオ)通りに動いてくれるか。故に白雪姫は食べたんだ。警戒心を解く為でもあり、策略でもあるのだから。
その後母は、白雪姫の手のひらで転がされていたとも知らず1000度に熱せられた鉄の靴でその命が尽きるまで踊らされ続けた」

一度言葉を切った。そして息を吸ってまた言葉を紡ぐ。

「白雪姫は、誰よりも母の死を願ったんだ。

白雪姫の物語は、とても素敵だね(君は私のシナリオ通りに動いてくれるかい?)」

かちゃり。音がなる。私は、監視カメラを睨みつけたまま引き金を勢い良く引いた。
銃が宙を叩く。重みのない音が辺り一面に響き渡った。空気が振動する。銃火が、閃いた。