さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ24)

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自殺サンと殺人鬼ちゃん　　諏訪部大和ページ24

「ひよくん。どこか行きたい所とかあるかな？」

私の隣で、彼はきょろきょろと辺りを見渡しながらやけに不安そうに日本刀の鞘を、包み込むように腕全体を使って持っていた。
彼には不釣り合いな大きさの日本刀。見たところ、太刀だろうか。

重い日本刀など小柄な彼に持たせてしまっても大丈夫だろうか、躓いてしまわないだろうか、色々な思考を頭脳で巡らせながらひよくんに思っていたことを問うてみた。

すると彼は、「特にないよ」とへにゃりと笑う。

「そっか。なら適当に歩いてようか」
「僕もそれでいいと思う…な」

ちょっと遠慮がちに、そう返事を返してきた彼に思わず小さく笑った。
そんな私を見てひよくんが、笑わないでよ！といいながら後ろから追いかけてくる。

その姿はとても愛らしくてつい意地悪したくなるが、これ以上意地悪したら彼は拗ねてしまうからやめておこうか。

2人で些細な日常のことを雑談しながら歩いていた時だった。前から誰かが歩いてくるような気配がした。足音が聞こえることはなく些細な気配だけが宙に漂っている。
妙な気配だ。それこそ死をなんとも思ってないような気配。まあ、私にとっては好機な相手なのだけど。

長い廊下は、暗くて窓から入ってくる仄かな光しかない。暗いかような廊下では相手を確認をすることも出来ない。
足を止めて隣で不思議そうな顔でこっちを見ているひよくんを守るように一歩前に出て目を凝らし、その暗闇の中にいるであろう相手を凝視した。

何かあれば、ひよくんだけでいいから逃がそうか。
そんなことを考えていると、「あれ…自殺サン？」とやけに聞きなれた声がした。

暗闇の中、立っていたのはやけに見知った彼女。
自殺サン、だなんて私のことをそんな可笑し気なあだ名で呼ぶのはあの子しかいない。

まあ、私も人の事を言えないか。自殺サンと呼ぶ彼女を、私は殺人鬼ちゃんと呼んでいるのだから。

「…殺人鬼ちゃんかい？」
「ええ、ワタシです。自殺サン、お久ぶりですね。コレに参加したんですか？」
「ああ、そうだよ。君もかい？」
「ハイ。そうですよ」
「奇遇だねえ」

久方ぶりの友が確かにそこに立っていて、彼女に微笑みかけた。

……彼女なら、いつも死に損ねる私を殺してくれるだろうか。
どれだけ自殺しても和泉くんの元にはいけない私を。

こんなことを思っているだなんて、不安気に私たちを伺っている隣のひよくんには口が裂けても言えない。
涙もろい彼は、きっと泣いちゃうから。