さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ15)

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自殺未遂　　諏訪部大和ページ15

繁茂となった一つの森を、彼女は歩いていた。まるで、草花を踵で削り落とすかのように素早く足は降ろされる。
木々の隙間から零れる仄かな光を頼りに、館へと続く道を自殺本片手に呑気な思考を巡らせながら諏訪部は歩いていた。

「今日はどんな自殺がいいだろうか。
首吊りも毒薬も出来る限りのことは全てやってしまったのだよねえ……」

おどけたように彼女は緩く口唇に三日月を描き台詞を口にする。

そんな彼女の様子は何も考えていないような、云わば能天気や馬鹿という言葉に他者目線から見た時当てはまるのだが全くもって違う。
馬鹿みたいだと言おうものなら己等は何も知らないのだと嘲笑されるに違いない。

普段はおちゃらけている彼女は、目を張るほどの怜悧な頭脳を持っているのだ。

「死にたい」そう嘆く彼女は、全てこの先起きることを容易に予想することが出来る。
毒薬が塗られたナイフで背中から内奥へと突き刺されたことがあるのだが、そのことを予想していた諏訪部は事前に解毒剤を含んでいた。
誰が何を言い、何をするのか。諏訪部には全て判る。

皆に話しても「そんな馬鹿な噺があるか」と嘲笑し信じないものの、この話は確かに実話だ。

彼女は産れた時に怖ろしい程の頭脳を天から賦与されたのである。おぎゃぁと赤子特有の産声を上げた瞬間に、彼女はこの世の事情を全て知り尽くしたのだ。

「…ここか」

彼女は気配を感じ顔を上げた。目の前に佇む館を諏訪部は照覧しながら本を閉じる。

鬱蒼たる森を木漏れ日の中歩き、薄気味悪い空気を肌で感じながら歩いて約三十分程。そこには館が佇んでいた。
静かに館に視線を送る。

「……和泉くんに、会えるかな」

囁くほどの声で寂し気な面影だった。だがしかし、瞬く間にいつもの余裕綽々とした笑みを浮かべて取手に手をかける。

館の周りは仄暗くて幽霊がいてもなんら不思議ではなく、諏訪部はまるで幽霊の様に身を隠す気持ちで扉に力を込めた。

古い音を立てながら開く扉の先には、沢山の武器が置いてあった。鞭や弓、小型銃等。殺し屋の拠点かと錯覚を覚えるくらいには机上に並べてあった。

夥しい武器を目の前に悩んでいる者もいたのだが、諏訪部は迷いなく小型銃へと手を伸ばす。

「ふふ…やはり、これが一番だ」

彼女はそう言うなり早々と慣れた手つきで、弾倉に銃弾を装填する。諏訪部の手にある銃が揺れ重い音を上げた。

「やっぱり、和泉くんとお揃いはいいね」

酷く嬉し気な表情であった。