さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ー第二章ー (ページ28)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:6,832 hit

もう一つの自己紹介諏訪部大和ページ28

「俺の名前は……」

震える手を押さえつけるように、俺はナイフを握りしめた。猛虎がいる虎穴に赤裸で放り出されたかのように、怯えていることが考えなくとも判り我ながら情けない、と己を嘲笑する。

俺がそこまで言いかけた時、一人の女に目が留まった。
彼奴は――諏訪部大和、と名乗った女だ。あの女には何かが引っ掛かっていた。どうも見覚えがあって、街ですれ違っただろうかと頭をひねる。

あの諏訪部だけ、呑気に呆けておりそんな彼奴は異端児としか捉えられなかった。

其の時『プルルル――……』機械音が鳴り響いた。言葉が止まる。
すると、諏訪部は横目で見つめ一人手慣れた様子で耳元に当て返答した。

あの女がなんて言っているのかは判らない。
だけど、とりあえず自己紹介を再開しようと「浴路麻呂」だ、と言いかけた時――

何故か諏訪部大和が俺のほうに向かって歩いてきた。こつ、こつとまるで死を連想させるような酷く冷えた足音に後ずさる。
あからさまな異端の雰囲気をまとっている彼奴は――どうも異常に見えて、脳が警告を強く鳴らしていた。
俺が冷や汗をかいているのに構わず諏訪部大和はゆっくりと、だけど確実な足取りで近づく。

やがて、目の前で止まった。

「……君の名前は浴路麻呂くんだね？」尋ねる諏訪部大和。
「あ、ああ……でもどうして俺の名前なんか……」

そこまで言いかけた時、諏訪部大和は言葉を遮るように笑みを浮かべた。冷えた笑みで、感情がこもっておらず誰でもわかる。おかしいと。

「グランギル、と言えばわかるかな？」

諏訪部大和が言ったとき、心臓が一つ高鳴った。ほぼほぼ反射神経という物が作動し動く。持っていたナイフを諏訪部大和の首元に突きつけた。それでもなお、目の前の諏訪部大和は意味深に笑みを浮かべているだけで俺の寿命が少しづつ削れられているような気がした。高鳴る鼓動を落ち着かせるように息を繰り返す。そして静かに睨みつけた。

「っどうして！どうしてお前が……」
「何も忠告をしに来ただけだよ。私たちのボスから命令が来たのでね。嫌だけども」

俺たちの只ならぬ雰囲気、次の人の自己紹介が綴られることはなかった。目線をひどく感じる。
「なんだぁ？痴話喧嘩かぁ？」と、冷やかす声が耳に入った。

「違う！」

違う、違う。こいつらの喧嘩(殺し)はそんな生温くない。あいつらからすれば素人の喧嘩だなんて赤子の手をひねるよりも簡単だ。