089 暖かい。 ページ9
振り返る。罠かもしれないということすら臆せずに。
例え偽りでも良かった。愛しい姿を、もう一度目にできるのなら。
「A……？」
絞り出した、彼女の名前。その名を呼ぶ声は震えていた。
「きょ、きょーや……って、ほへーーーッ！恭弥怪我！！」
「こんなのどうでもいい！……ねぇ、大丈夫なの？」
「だ、大丈夫！」
「本当に？！痛いとことか！」
「ないないないないないよ！！」
雲雀の慌ただしい雰囲気に押され、若干後ろに下がり気味のA。
そんな彼女を雲雀は強く抱き締めた。
トクトクと伝わってくる心音。暖かな人のぬくもり。
Aの生を感じて、雲雀はやっと安堵の溜め息をつくことができた。
「……良かった…。ホントに良かった」
強く抱き締められて、Aは一瞬だけ震えた。
まだ夢の中ではないのかと、不安が脳裏を過ったからだ。
「…………夢、じゃ……ないの？」
「夢じゃないよ。でも、もしかすると幻術かもしれないけど……僕が君を抱き締めていることだけは本当」
「……恭弥、あったかい」
雲雀の匂いを感じながら、Aは目をつぶる。
そうして段々と今に至る経緯を思い出して、ハッと雲雀から身体を離した。
「アリスは？！」
「え？」
「アリス！あの子は？！」
Aは雲雀を押し退けて、彼の背後を見据えた。
そうして、見つけた。雲雀の背後にアリスがいる。
白い部屋の壁にもたれ掛かり、彼女は唇から流れた血を手の甲で拭った。
「アリス！」
Aはアリスの元へ駆け寄ろうと、ベットから飛び降りる。
大きく一歩を踏み出して、しかしそれをアリスの拒絶に阻まれた。
「くるな！！」
「へっ？」
チャラ……と鎖が音をたてる。アリスが武器を構えたのだ。
アリスのナイフの切っ先は、Aへと向いていた。
「アリス……？」
「ヒバリキョウヤ、テキ。ヒバリキョウヤ、ころす。かわらないシメイ。……おまえ、ヒバリキョウヤのヨメ。なら、オマエもテキ。オマエ、も」
Aは目を見開く。
それは言葉に驚いたからではない。
「…………オマエ、も、ころす」
「……どーして、泣いてるの？」
アリスは泣いていた。
アリスの瞳から零れる涙に、Aは苦しそうに顔を歪ませる。
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レナ(プロフ) - なるほど。ありがとうございます (2015年9月22日 12時) (
レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
紅うさぎ(プロフ) - レナさん» そうですね。番外編は本編とは別なので、なんとなく察してもらえたらいいです (2015年9月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 6f89c7bf5f (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - もう君だけの体じゃないんだからって恭弥が入っていたので、この事件？は終わってたのかなぁと (2015年9月22日 11時) (レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
紅うさぎ(プロフ) - レナさん» あぁ、そうですか。 終わっていたとはなんですか？ (2015年9月22日 10時) (携帯から) (レス) id: 6f89c7bf5f (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 冗談ですよ汗 そう言えば、未来に行った時にはすでにこれは終わっていたのですか？ (2015年9月22日 10時) (レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅うさぎ
| 作成日時：2015年3月31日 13時
