093 声を。 ページ14
武器を振り上げたAを目の前にして、雲雀とアリスは硬直した。
躊躇った。例え幻術のAでも、彼らにAを傷付けることは出来なかった。
その躊躇の間に、幻術のAは振り上げた武器を雲雀へと降り下げる。
ヒュンっと急降下する武器に、雲雀はトンファーをクロスさせてその攻撃に備えた。
幻術のAが雲雀にナイフを突き刺す。いや、突き刺そうとした。
「ア、アタシを使うなーーーっ！！」
その一瞬の間、パンっとAの平手打ちが炸裂。突然の横槍に、幻術のAは怯む。
その隙をついて、アリスが幻術のAを突き飛ばした。幻術は尻餅をつくと、すぐにドロリと影に変わる。
「うげ……っ」
Aが嫌そうに顔をしかめた。
それもそのはずだ。先から幻術の繰り返しで、なにがなんだか分からなくなってくる。
ドロリ。
地面の影が盛り上がり、また一人二人と人間を作る。
雲雀は片腕でAを強く抱き締めながら、もう片腕でトンファーを掲げた。アリスも己の武器をかざす。
と。
「アリス！！」
「恭弥っ！A！！」
部屋の出入り口から、声が響いた。灰かぶりと跳ね馬の声だ。
跳ね馬の肩にはヘンデルが、跳ね馬の後ろを追うロマーリオの肩にはグレーテルが担がれていて、二人とも戦闘不能にされたことが分かる。
金髪を振り乱しながら走る灰かぶり。彼女は大声で叫んだ。
「そこから出ろ！眠り姫の幻術の範囲はその部屋だけだ！」
「！！」
それを聞いた雲雀はAを出入り口へと、文字通り投げた。
放物線を描きながら、跳ね馬の胸元へ収まるA。落ちそうになったヘンデルを、灰かぶりが支える。
次に、雲雀とアリスは走り出した。
しかし。
ガシャっ……！
雲雀が抉じ開けた出入り口の上のほうから、シャッターが降りてきた。
「恭弥！アリス！！」
彼らは速度を上げる。
アリスは、光の方へと懸命に走る。Aのいる方へと。
『………………アリス』
「……え、」
不意に名を呼ばれた……気がした。
女の声だ。懐かしくて、暖かい。
アリスは足を止めて、後ろを振り返る。
だが、誰もいない。暗い闇が広がっているだけだ。
「アリスっ！？」
Aの声に、慌てて前を向く。
雲雀はもう出入り口の向こうにいた。
シャッターが閉まり行く。アリスを一人残して。
アリスが駆け出すも、もう遅い。
彼女の視界から光がだんだんと細くなっていった。
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レナ(プロフ) - なるほど。ありがとうございます (2015年9月22日 12時) (
レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
紅うさぎ(プロフ) - レナさん» そうですね。番外編は本編とは別なので、なんとなく察してもらえたらいいです (2015年9月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 6f89c7bf5f (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - もう君だけの体じゃないんだからって恭弥が入っていたので、この事件？は終わってたのかなぁと (2015年9月22日 11時) (レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
紅うさぎ(プロフ) - レナさん» あぁ、そうですか。 終わっていたとはなんですか？ (2015年9月22日 10時) (携帯から) (レス) id: 6f89c7bf5f (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 冗談ですよ汗 そう言えば、未来に行った時にはすでにこれは終わっていたのですか？ (2015年9月22日 10時) (レス) id: a3dc584c6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅うさぎ
| 作成日時：2015年3月31日 13時
