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かたわらに置いた読みかけの本と、空になって並ぶ２つのマグがふと目に入って、トールは手を止めた。
トールの淹れたコーヒーを美味しそうに飲むAの無邪気な笑顔。寄りかかる頼りない柔らかな肩。真剣に文面を追う崇高な眼差し。それを一番近くで眺められる特権を、一瞬の欲で失いたくない。この距離感も、トールはまた好きなのだった。最愛の相手を、誰よりもそばで見つめられるこの立場を。
ーーだから、まだ。
トールはうなじに押し付けようとした唇を静かに離し、肌を這う指の力をゆっくり抜く。服の下から手を抜くと深呼吸して、剥がした毛布をまた掛け直した。そして一度だけ、毛布の上からそっとAを抱き締める。目を閉じて、力を込めすぎないように慎重に、しかし、情欲を超えた溢れる愛を込めて。
ーー今はこれが、精一杯。
「不毛だな、トール」
正面から声がする。Aを抱えたまま目だけ開けると、向かいに陣取って眠りこけていたはずのシーザーが、横になって目を閉じたまま口だけ動かしていた。
「……起きてたのか」
「あのな、そうやって決定的に手を出せずにいつまでも大事にしてると、いい加減誰かに取られるぞ。いいのか？」
シーザーの言葉にトゲは無い。これは揶揄ではなく、きっと、親友のもどかしい恋路に発破をかけたいという優しさだ。言わんとすることはよくわかる。
でも……と、トールはあくまでいつもの落ち着きで、Aの頬にかかった髪をそっと耳に掛けてやりながら、ひっそりと答えた。
「よくない。けど、まだこのままがいいんだ。でも、俺からAを奪うこともさせない」
「何だって？」
「手を出してきたら、丁重にお断りする」
「……トール」
「サンキュー、シーザー。もう寝るよ、おやすみ」
シーザーの言葉を待たずに、トールはAを抱く腕をそっと離し、自分も隣に座り直すと即、逃げるように毛布を引っ被った。これ以上の問答は恥ずかしかった。
「……丁重にだと？ははっ、嘘だね。お前、叩きのめす気満々だろ？独占欲剥き出しじゃねぇか。ああ！おっかねぇ、おっかねぇ」
どこか満足そうなシーザーの声を毛布越しに聞きながら、トールは横に並ぶAの手を握り、額を合わせて目を閉じた。
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ムスメ3(プロフ) - トール優しすぎるってばよ (2月18日 21時) (
レス) id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - ムスメ3さん» あたたかいコメントありがとうございます！いつもとても励みになっています。また是非遊びに来て下さい(^^) (2月14日 17時) (レス) id: b1708db406 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - お返事ありがとうございます！あなたの作品が見れるなら幾らだって待てますとも!! (2月14日 1時) (レス) id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - ムスメ3さん» こんばんは、ムスメ3さん。いつもありがとうございます！他にバレンタイン話は書いていなくて……遅筆なもので申し訳ないです。お待たせするとは思いますが、ガンナーにもまだ沼っているのでお話を増やす予定です。是非楽しみにお待ち下さいませ！ (2月14日 0時) (レス) id: b1708db406 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - あ〜まじ最高 、ガンナーのバレンタイン話とかってありますかね？|ω･` ) (2月13日 19時) (レス) @page4 id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るう | 作成日時：2024年2月12日 23時
