Silence【ありす様リクエスト:Silent続編】 ページ39
『次の満月に、魔女が魔法をくれるわ』
流華は鰭で水面を、一つ蹴った。
『中也、本当に良いの?』
「良いぜ」
この声を対価に、流華と生きる幸せを得られるのならば。
中也は笑って、海水に濡れた彼女の髪を梳いた。
※
月日は巡り。
やってきた満月の夜。
中也は小瓶に声を詰めて海に投げた。
対価をもって、願いは成就するはずだ。
祈るように待つ。
ふと人の気配に顔を上げた。
そこに、流華が笑っていた。
彼女には、もう尾鰭はない。
あるのは、人間の二本の脚だ。
「 」
思わず、彼女を呼んで…無音のまま抱き締めた。
※
あの夜の浜辺で、二人は声と故郷を捨てた。
遠く、遠く流れて。今、山奥の家で暮らしている。
<平気か?>
時たま痛むという、流華の真新しい脚を撫でてやる。
くすぐったいのか、彼女は音の無い笑いを弾けさせた。
≪大丈夫。中也が、いてくれるから≫
筆談用に買った黒板に、白墨の言葉が躍る。
愛しさが溢れて、彼女の額に口づけを贈った。
<流華、立てるか?>
≪うん≫
そっと、彼女に手を差し出して。
恭しく、差し出した手に、重なる温もり。
気に入りのレコードをかけて。
ダンスの真似事。ゆっくり、音楽に身を委ねる。
流華が早く脚に馴染めるように始めた事だったが、今では二人ともとても楽しんでいた。
―ちゅうや
彼女の唇の動きに、首を傾げる。
―しあわせ
唇が作った形に笑って、唇を合わす。
―おれも、しあわせ
無音の応えに、流華は穏やかな笑みを返す。
王宮の華やかさはない。
楽園の癒しもない。
けれど、此処には幸せがある。
こつん、と額を合わせて二人で笑う。
二人の声は泡沫。もう何処にもない。
部屋の中には、ただ、穏やかな音楽が満ちている。
そして、暖かな愛で満ちている。
――――
リクエストを頂きました。
ありす様誠にありがとうございます!
このようなモノでよろしかったでしょうか?
可能であれば感想をお願いいたします。
2016年11月29日ちょこ
めたもるふぉーぜ・鮪【桜様リクエスト:めたもるふぉーぜ未満続編】→←魔法使いと愛のうた【INDEX425様リクエスト:魔法使い夢主】
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ちょこ(プロフ) - パピルスさん» お待たせしました!先刻其の11にてアップ完了いたしましたのでご確認お願い致します。 (2017年10月29日 22時) (レス) id: 25228574eb (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - パピルスさん» お久しぶりです!!お返事遅くなり申し訳ありません!!(;´・ω・)リクエスト誠にありがとうございます!!10/27-29日頃アップにて書かせて頂きます!少々お待ちくださいませ! (2017年10月26日 0時) (レス) id: 25228574eb (このIDを非表示/違反報告)
パピルス - 記憶の雨の続編をリクエスト宜しいでしょうか。何年か過ぎて生まれ変わった2人を書いて頂きたいです!記憶は全くないけど何処か知っているような感じで惹かれ合うお話を書いて頂きたいです!お願いします(人´∀`*) (2017年10月23日 23時) (レス) id: 8aa7434c54 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 黒鶫文佳さん» お待たせいたしました!!其の7にてアップさせて頂きました!ご確認よろしくお願いいたします! (2016年12月9日 18時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ふうかさん» お待たせいたしました!先刻其の7にてアップ完了致しましたのでご確認くださいませ! (2016年12月8日 23時) (レス) id: 2bc1ed36c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年10月28日 21時