【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の6

記憶の楔【パピルス様リクエスト：『記憶の枷』続編】 ページ8

愛おしい。
そう思う事は罪なのか。

蝕まれていく。
身も心も。

「流華」

触れ合わせる唇は、かさついて…冷たい。

壊された彼女を殺そうとして。
でも、どうしても出来なくて。

手前ェが生きてくれているだけでも幸せなンだ。

「愛してる」

何度も、彼女に口付けを繰り返す。
中也も、もう壊れかけていた。

――今日も。

『中也！！中也！助けて、助けて！！！！！』

流華は声を限りに叫んで抵抗した。
中也の腕に爪を立てて。

その傷痕の薄さが、辛い。

もう。駄目なのだ。
中也が流華を殺そうが殺すまいが。
終わりの時はすぐ傍まで忍び寄っている。

流華はこの数週間、栄養の全て薬剤に頼って生きていた。
だから。筋肉は衰え、肌は潤いを失い、髪は乱れた。

まるで、内側から死んでいくように。

「俺が…もっと…」

もっと早く殺してやれれば良かったのに。
でも、できないのだ。

「愛している」

狂おしい程に。
ただ、愛しているのだ。

零れ落ちた涙が流華の肌を伝っていく。

嗚呼。
此の血に穢れた身で云えた義理ではないけれど。

「…助けってやってくれねェか…」

神でも仏でもなンでも良い。
対価がいるのならば、俺の肉体でも魂でも記憶でも持っていって構わない。

だから。

「此奴を助けてやってくれよ…」

流華に寄り添って泣いた処で誰も救いを寄越さない。
ただ絶え間なく、二人して死に向けて押し流されて行くだけだ。

ならば。

「流華」

後、何日一緒にいられるだろう。
せめて最期に自分が示す愛情は。

「…愛する者が死んだ時には…」

自らも死んでしまおう。
何度も彼女を殺し損ねた刃を胸に突き立てて。

「流華」

同じ棺に並べて。
同じ墓に葬って。
同じ死出の旅路。

「ずっと、一緒にいるからな」

抱き締めた躰からは未だ鼓動の音がした。

――――

リクエストを頂きました。
パピルス様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2016年11月2日ちょこ

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