【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の11

ラッピングラブ【鈴華様・八紡陽人様リクエスト：ラッピングキス続編】 ページ17

流華は基本的に外食をしない。
他人が作る食事に安心を感じられないからだ。

まず、調理器具を大きな鍋に入れて煮沸消30分。
肉も野菜も前日から度数の高い日本酒に浸けている。
それを密閉容器から取り出して、さらに酒で表面を洗う。

其処までやって、やっと調理開始だ。
調理は簡単。焼くか煮るか、二者択一。
とにかく40分以上加熱して雑菌を殺す。
多少肉が固くなろうが、焦げようが構わない。

出来上がった黒っぽい物、人呼んで【流華飯】。

もちろん、食後に食器を除菌、消毒する。
そうしないと気が済まないのだ。

潔癖症。
それが流華の抱える悩みだ。

一人で生きていた今までは、何も問題がなかった。
首領の森鴎外も、この症状に理解があって、ポートマフィア拠点内に流華がゆっくり食事をできる部屋をくれた。

仕事をして、この部屋で食事をして、清潔な自宅に帰る。
それだけなら、良かったのだ。

だが、今流華には、恋人ができた。

中原中也。
潔癖症の事もわかってくれる優しい人。
だからこそ、申し訳なく思ってしまう。

基本的に、二人が逢うのは、流華の食事部屋なのだ。
中也を部屋の招くことも、逆中也の家に行くのも、流華にとっては難しすぎて。

けれど、中也は文句１つ云わない。
どころか、潔癖症故に口づけも出来ないと泣きついた流華にラップ越しの口づけを教えてくれた。

好きで、好きで。なのに触れる事もできない。苦しい。

「んな、泣きそうな顔すンな」

中也の口づけは優しい。ラップがなければ、飴玉のように甘い味がしそうなくらい。

『……ごめん、中也』

ラップを、そっと剥がしてくれる中也を見上げる。
目が合うと、海の色をした瞳が緩く笑んだ。

「なァ、流華。今度、家に来ねェか？」

突然の誘いに、流華は身を固くする。
行きたい、けど、いけない。

泳ぐ目に、中也が可笑しそうに吹き出す。

「新しく買ったンだよ。安心しろ、綺麗だから」
『へ？』

目を白黒させる流華に、中也は新築マンションの写真を差し出す。

「流華とゆっくりしたいと思って、な？」

この部屋は、好きにして良い、そう笑う中也に流華は思わず倒れそうになった。

ああ、今日も彼が格好良すぎて辛い。

――――

リクエストを頂きました。
鈴華様・八紡陽人様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2017年8月3日ちょこ

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