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花火夜恋物語 ページ49

風が流華の髪をかき乱す午後八時。
缶のままのビールを合わせると鈍い音がする。

『かんぱーい!』
「へいへい」

互いにプルタブを引く。
何故か中也の缶だけ中身が噴出した。

「ぉわ!」
『へへ、振っといたよ!』
「手前ェ」

幸いベランダだから掃除は楽だが、だいぶ中身は減った。
恨みがましく睨むといたずらっぽく流華が笑う。

その、向こう側で花火が大きく咲いた。

『わ、始まった!!』
「ああ」

ビールで濡れた襯衣もこの気候ならすぐ乾くか、なんて楽観して花火鑑賞に集中する。

いや、集中するのは無理、か。

付き合って一か月強。

『わぁ、花火大会だって!行きたいね、中也!』

撒いた餌に食いついて笑った彼女を。

「此れ家から見えるぜ。来るか?」

親切めかした言葉でくるんで。

『本当!?行きたい!』

罠に嵌めた。
いや、嵌められたのは中也の方かもしれない。

「なんだよ、それ」
『お泊りセット』

やたら大荷物で彼女がこの家に来たのが数時間前。
それが、一歩進んだ関係になることへの了承みたいで。

たったそれだけのことで、まるで初めてみたいにどぎまぎした。

花火を見てから。花火が終わってから。
…それを言い訳にしてきた。

けれど、花火が始まった今。
お互い、生温い風が吹くベランダで次の一手を見失って、また花火を言い訳に黙り込む。

嗚呼、恰好悪い。本当に経験の無い男みてェじゃねェか。
本気だからこそ簡単に触れられない、ジレンマ。

もうすぐ午後九時。花火が終わってしまう。
なるようになれ、だ。

一気に流華との距離を詰める。
手を回すと、細い肩が跳ねた。瞳が揺れている。

中也と彼女の後ろで終了間際の花火が乱れ咲く。

口付けの最中、花火の轟音さえ消えるほど全身が熱かった。

「流華、手前ェが欲しい」

火薬の余韻が残る宵闇。
月並みな表現だが、花火なんかより、彼女の笑顔の方が綺麗だった。

※※

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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/  
作成日時:2016年6月14日 21時

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