かき氷 ページ47
『く、あぁあああああ!!
中也、もう、無理ッ…!!』
「うるせェ!」
色気があるんだか、無いんだか。よく分からないこの二人は中原中也と愛妻、流華。
ちなみに、今は真昼間。
別に人に言えない事をしているわけでも何でもない。
ただ茶屋の軒先でかき氷を頬張っているだけだ。
久しぶりに出来た夫婦水入らずの時間。
まだ行ったことの無い逢引場所(デートスポット)なんかを散歩しようというわけで外に出た。そこまでは良かったのだが、如何せんこの暑さだ。
早々に口数も減ってしまって、帰るべきか思案していた時。
天の助けのように現れたのが≪氷≫と書かれた幟(のぼり)だった。
飛び込んで、注文を済ませ、待つほどもなくやってきた氷の山。
まぁ皆さんお察しだろうが流華はその冷たい甘味を急いで食べ過ぎた。
そして話は冒頭に戻る。
『うるさくない!あいた、頭キーンってする!!』
「だからゆっくり食えって云ったろ」
中也は自分のみぞれを一さじ掬って口に運ぶ。
若干呆れたその目を流華は睨み返す。
が、頭が痛むのか潤んだ目では迫力の欠片もない。
寧ろ…
先ほどまで食べていた苺氷の蜜の色だろう紅が染みの込んだ舌も。
痛みで薄っすらと涙を湛えた目も。
先ほど迄の汗の名残りも。
『ちょ、中也!?ナニ厭らしい顔してるの?このドスケベ!』
「はァ?ンな男と結婚したのは何処のどいつだよ?」
何故だか否定されなかったドスケベ疑惑に妻は内心お手上げだ。
もう、この男、暴走する気しかないな、と。
雰囲気壊さない為に敢えて不必要な部分は無視したな、と。
それはもう、結婚前からのやり取りで学習した。
こうなったら本気で抵抗しない限り…中原中也は止まらない。
そして、彼女は≪女の子の日≫でもなければ彼を拒めない。
『降参!帰ってからね?』
手を上げる妻に中也は口端を吊り上げる。
「待てるかよ…」
小さな、口付け。店にお代を置いて。
散歩コースから歓楽街へ、二人の背中が消えていく。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時