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貴方と出会って花になるーたばこー ページ38

その瞬間、彼女は狂ってしまった。
この春婚約したばかりの、中原中也の死を知って。

『中也、何処にいるの?』

『中也、もうご飯できるからね!!』

『あ、お母さん!ちょっと中也に逢いに行ってくるね!』

昼間はこうしてもういない恋人を呼んで。
夜になると、彼の死を思い出したみたいに泣き叫んで。

『お母さん、中也がいないの!!何処にもいないの!!』

流華はやがてやつれていった。
娘を突き放すことも、真実を突きつけることもできない両親はただ彼女に寄り添った。

そんなある日。
公園の池に流華の死体が浮かんだ。

戯曲のオフィーリアのように、静かに揺蕩う死に様。

彼との思い出の地を歩いている最中の事故だ、と軍警は云った。
けれど流華を知る者は自 殺かもしれないと、噂した。

しかし死因がどちらにしろ、遺された娘の両親の悲しみは深かった。

父は娘と婚約者が笑う写真を見たまま何も言わない。
母は娘が着るはずだった花嫁衣裳を抱きしめて泣き暮れる。

欝々とした家はやがて荒れ、両親は荒んだ生活を送っていた。

そんな矢先のできごと。
不思議なことにその夕刻、両親は揃って寝入ってしまった。
そして同じ夢を見たのだ。

「お義父さん、お義母さん、娘さんを悲しませることをしてすいません」

帽子を取った背年は深く頭を垂れた。

『ごめんね、先に逝ってしまって。親不孝を許して』

彼の横に立った娘は、苦しそうに詫びた。

『でも、私、今此方で彼と幸せなの』

照れたような笑顔は、狂う前の美しい物だった。

『二人に笑って欲しいから、どうか私のお墓に行ってください。
最後の贈り物を用意しました』

夢が醒めたと同時に、両親は走りだした。
娘の墓には花が咲き誇っていた。

夢で彼女が云った通り、その葉を乾燥させ、巻いて、火をつける。
その煙を吸い込むと、悲しみが薄れ、少しずつ二人は笑顔を取り戻した。

その後二人は娘の墓参りに行った。あの世で、彼女と婚約者が幸せに暮らせることをただ祈る、その姿を見つめる花。

その花の名は≪煙草≫、花言葉は≪あなたがいれば寂しくない≫

貴方と出会って花になるーぼだいじゅー→←貴方と出会って花になるーくわー



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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/  
作成日時:2016年6月14日 21時

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