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貴方と出会って花になるーくわー ページ37

男と女がいた。同じ年頃だった。二人は恋に落ちた。
何処にでもある物語だ。

けれど、それは悲劇でしかなかった。

少女はマフィア嫌いの資産家の娘。
青年はポートマフィアの五大幹部。

結ばれない定め。誰も幸せにならない恋。
けれど出会ってしまった二人の心はもう離れられなかった。

「手前ェを、連れて消えちまいたい」
『貴方と一緒なら、どこでも行ける』

人目を忍ぶ逢瀬でも幸せだった。
ただ寄り添っていられるだけで、苦しいくらい幸せだった。

けれど。

どんなに隠しても、いつの間にかそれは噂となり、ついに少女の父の知るところとなった。

そして、遂に自室に幽閉された彼女の元に、遠い街での縁談が持ち込まれた。

彼女は泣いた。こんなにも愛した人がいるのになぜ引き裂かれるのかと。
そんな彼女の肩を抱いたのは、愛しいその人だった。

『中也?』
「迎えにきたぜ、流華」

そう。彼は異能力者。重力を操る彼の前では二階なんて障壁にもならなかった。

ふわり、月を背に愛する女を胸に抱いた彼の影が飛ぶ。

「何処行きたい?」
『いつもの場所』

二人の秘密の逢瀬の場所だった果樹園の前に。

『それから、遠くへ。誰の手も届かないところへ』
「…わかったよ」

どうしようもない恋だったんだ。
仕方ないんだ。もう、これしか方法が無い。
果樹の葉の影で二人泣きながら愛を囁きあう。

「愛してる」
『来世でも、きっとね』

抱きしめた小さな背中。中也は唇を噛みしめ、愛用のナイフを彼女心臓めがけ振り下ろした。

流華の最期の言葉は、『ありがとう』だった。

喉の奥が焼けるように熱い。自分が声を限りに泣いていると気づけない程に、狂ってしまうほどに、彼女が愛おしかった。

「すぐ逝くぜ」

ナイフをきつく握りしめて己の首に突き立てて、引いた。
蒼白い月に、紅が舞うのが何処か他人ごと。

嗚呼愛している。愛している。あの世でも、来世でも出会えたら、屹度幸せにするから。

若い二人の悲劇を悲しんだ果実は血の色に身を染めた。

その花の名前は≪桑≫、花言葉は≪ともに死のう≫

【すまない、自分の愚かさを恥じた資産家は流華と中也を同じ墓に埋葬した】

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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/  
作成日時:2016年6月14日 21時

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