どうか、その手で―後編 ページ24
朝。隣では流華が寝ていた。
白くまろい肩が朝日を跳ね返す。
愛しい。
思わず喉をついて漏れそうな音を噛み殺して。彼女の肩に唇を落とす。
鬱血した独占欲の華を刻みたい。噛みついて、消えない痕を刻んでやりたい。
けれど≪商品≫として袋詰めされた女にそれは許されない。
たとえ、流華が許しても、組織が許さない。
苦しい…。
溺れているような。締め付けられるような。捩れてしまうような。
叶わぬこの想いは、恋なんて呼ぶには重すぎる。
いっそ、と愛用のナイフに手を伸ばしかけて軋る程を噛みしめた。
「青鯖野郎かよ、俺は」
舌打ち一つ。乱雑に取り出した煙草を吹かす。
相思相愛。味方同士。阻む壁は何も無い。
それでも、悲恋になるのか？
ふいに、その時啓示めいて降ってきたのは、殆ど可能性の無い、賭けだった。
※
部屋に帰ると、流華がいた。混乱した顔で。
当たり前だろう。いきなり仕事が無くなり、他人の家に軟禁だ。
しかも、夜半に帰ってきた家主は返り血塗れ。
『中原幹部…』
云いたい事が多すぎるのか口ごもった彼女の瞳が揺れる。
血の飛んだ手袋を脱ぎ捨てて、中也は彼女に触れる。
「手前ェは、暫くマフィアを離れる」
今朝の思い付き。首領は≪最適解≫を常に求める。その≪答え≫が今回偶々流華だっただけだ。ならば、失敗した場合の次の手は必ず読まれている。
なら一を飛ばして、二を自分が実行することはできないか？
賄賂(わいろ)代わりに嫌な仕事の二つ三つを付ければ、不可能じゃないかもしれない。
その絶対条件として、必要な手順は≪流華が任務を受けた事実を無にすること≫。
でなければマフィア内部の均衡が崩れる。
その為には≪任務を言い渡す前に辞職した≫ことにするのが手っ取り早い。
「それしか、手が無かった」
『中原幹部！そんな、どうして…！？』
「あァん！？」
紅い貌でおろおろする流華。
嗚呼もう完敗。
「…手前ェが欲しいと思った。それだけだ」
『中原幹部…』
「おい。昨日云っただろ？」
『え？』
「呼び方！」
『…中也？』
「よし。で、返事は？」
いきなり泣き出した女に、中也は慌て出す。
そんなことお構いなしに、彼女は中也の胸に飛び込んでくる。
「おい、手前ェ汚れるだろ！？」
『良いんです、私、今幸せだから』
二人して、その夜は久しぶりに笑った。心の底から、笑った。
さよなら、愛してる【リア友ネタ提供：不治の病に侵された夢主に愛を誓う中也】→←どうか、その手で―前編
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか！！！ありがとうございます！！Ｂダッシュで見に行きます！！ (2016年7月17日 10時) (
レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます！読んでいただけて嬉しいです！！先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします！！ (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです！！ハッピー方面で！！ (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます！先刻アップさせていただきましたのでご確認ください ！！ ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます！これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております！ (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時：2016年6月14日 21時
