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どうか、その手で―前編 ページ23

部下が泣いていたら、上司なら気になる。それは仕方ないことだ。

そんな建前。

「如何したンだ?」

そんなモノに頼らなければ、こんな簡単な声さえかけられない。

中也は自嘲を噛み殺す。

初めて心から欲しいと思った女が目の前で泣いているのに。

何時から自分はこんな臆病になったのか?

問うても仕方の無い思考を封じて、しゃくり上げる彼女の細い肩を撫でる。

その瞬間跳ねた肩に、しまった、と手を引こうとした。だがそれは細い指に絡め取られた。



「…流華?」



泣き腫らした紅い目が、挑むように此方を向いて、揺れる。

『中原幹部…身の程知らずのお願いなのは分かっています。でも…』

そこで、彼女は己の唇をきつく噛んだ。血が、滲むほど、強く。

それでも、目は逸らさなかった。

『今日、私を抱いてくれませんか?』

まっすぐに交じる視線。鼓膜に突き刺さった覚悟の声音に、足元が崩れる錯覚。

中也は、もう組織にいて長い。
女がこんな顔をする意味を、嫌というほど、知っている。

ポートマフィアにとって情報は何にも変え難い財産。そして…裏社会なんて、手段の美醜を問うてはやっていられない。

女は情報を引き出す為の罠となり、糧となり、供物となる。

…流華にも、ついにその順番が回ってきた。それだけの話なんだ。

だから…まるで代々の暗黙の約定のように、彼女らはせめて、と好いた男を最初の相手を望む。

娼婦の真似事めいた、これからを耐え抜く為に。

その男が自分を好いていたなら、それがどんなに残酷な願いになるか知りながら。

「良いぜ、流華…」

死にたくなる後悔と泣きそうな絶望が己を責め立てる。

それでも、中也は彼女の手を取った。

どうか、その手で―後編→←日常に溢れる【佐久間楓様リクエスト:甘えん坊中也】



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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/  
作成日時:2016年6月14日 21時

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