生存確認と愛情表現 ページ12
雨だ。激しく叩きつけるような雨だ。
流華はその雨音に浅い眠りから掬い上げられた。
この天気で気になるのは恋人のこと。濡れてはいまいか、帰れずに困っていないか。
頭を過った心配事で携帯を取るが、もう日付変更線を跨いだ時間。眠っているかもしれない。
仕事でも使う番号の為≪中原中也≫と登録した電話番号を眺めて迷う。
その時。玄関の呼び鈴が鳴った。
胸騒ぎがして、急ぎ覗穴から来客を確認する。…厭な予感程当たる。
そこには、ずぶ濡れになった中也が呆然と立っていた。
※
扉を開けて招き入れるなり「寒い」と蹲った彼をなんとか風呂に入れた。
この寝苦しい夜に、寒いと震えた肩。流華は彼が壊れて仕舞わないか、怖かった。
だから、ずっと。今も浴室から漏れるシャワーの音が聞こえる壁に左半身を預けている。
彼女だって知らない訳じゃない。
ポートマフィアなんて因果な仕事だ。例え親でも兄弟でも友でも、殺せと言われたら、実行するしかい。
風呂に追い遣る時に預かった、中也の気に入りの帽子を抱きしめる。
薄い色をしたリボンには、返り血が飛んでいた。
彼は、この豪雨の前に、親しい誰かを殺したのだ。
なんで?どうして?何が悪いの?なんで世界はこんな残酷に人を傷つけるの?
問いかけたところで、誰も答えてなんかくれない。そんなの、考えていたらマフィアでは生き残れない。
シャワーの音が止まっているのに気づいて、零れそうになった涙を拭おうとしたら、先に暖かい指に拭われた。
いつの間にか、後ろに中也がいた。
「…御免な」
首筋に、何度も唇が降ってくる。
まだ震えの残る彼の躰。時たま、素肌を掠める歯の感触。彼女を掻き抱く、不器用な手。
彼女もまた、襯衣も着ていない彼の素肌に手指を這わせる。
『中也…寒い』
「俺も、寒い」
何方からともなく、ひたすらに唇を貪る。
呼吸する暇さえも惜しい。ただ、愛しい人が生きていることをお互いに証明したかった。
そうしないと、息をするのも苦しかった。
『もう、いっそ中也と一緒に死んじゃえばいいのかな』
「青鯖みてェなこと云ってんな」
『だって、中也が可愛そう』
「俺は…大丈夫だから」
この不公平な世界。せめて寄り添う今の時間が永遠に続きますように。
祈るしか道の無い人間たちは、肌を寄せ合い、豪雨の夜を明かす。
嫌がらせ魔と標的(ターゲット)→←花言葉は永遠の愛【矢印様リクエスト:夢主の死によるシリアス】
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時