お手をどうぞ ページ2
流華はちらり、と時計を見上げる。
今日こなすべき仕事はこなした。終業まで後10分。長い。
時間が欲しい時はいつも素早い秒針が、今日は嫌がらせのようにノロノロとしか動かない。
これから、上司と…いや、恋人である中也と逢引(デート)だというのに、もどかしい。
※
やっと定時をむかえ、仕事場から一歩出る。
彼はここで待っていると言っていた。
きょろきょろと辺りを見渡す。
いない…と思った瞬間、背中に体温がのしかかる。
「遅ェよ、莫迦」
耳元で呟かれた声。間違いない優しい腕。少し速い鼓動。
『ごめん、お待たせ』
振り返れば、存外優しい顔で笑う中也がいて、心臓が跳ねる。
「待ってたぜ、流華」
首筋に彼の鼻先が埋まる。ちょっと、甘えたい彼のアピール。
そんな風に言われると嫌でもうぬぼれてしまう。もっと、好きになる。
『中也、好き』
自分を抱きしめる腕をちょっと撫でて流華は笑う。
「…莫迦」
そっぽを向いた照れ隠し。笑うと、「飯、いくぞ！」と乱暴に、でも優しく手を引かれた。
※
本日、中也が予約した店はダンスホール。
小洒落た音楽、葡萄酒、後はうまい食事。
気が向いた紳士淑女が店の真ん中で踊っている。
一般人の前だから、仕事の話はしない。それに。
恋人との甘い時間に、血なまぐさい話はしたくない。
「そしたら店員がな…」
日常な小さな出来事、ちょっとした自慢、小さな愛情の応酬。
笑いながら、和やかに食事が終わる。
丁度会話の切れ目。
流華はまるでオルゴールの上の人形見たいにくるくる回る淑女を見るとは無しに見る。
「踊るか？」
『え？』
「これ、手前ェの好きな曲だろ？」
確かにそうだ。覚えていてくれたことは嬉しい。
『でも、私は下手だし…』
「でも踊れるだろ？」
『あ、や、でも…！』
「ん？」
怪訝そうな彼に、俯く彼女。
『私、スーツだし…』
カラフルに踊る、あんな場所に…こんな真っ黒スーツなんて恥ずかしい。
「莫迦か」
いきなり引かれた手。
驚いているうちに、もうホールのど真ん中。
「いいか？手前ェは俺が選んだんだ。何着てたっていい女じゃねェか」
ダンスの邪魔だ、なんて、お気に入りの帽子も脱ぎ捨てて。
真顔でそう言う彼の顔が眩しすぎる。
眩暈にも似た恍惚感。
「自信持てよ。
無理なら、俺だけ見てろ」
流華はただコクコクと頷く。
「さァ」
お手をどうぞ。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか！！！ありがとうございます！！Ｂダッシュで見に行きます！！ (2016年7月17日 10時) (
レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます！読んでいただけて嬉しいです！！先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします！！ (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです！！ハッピー方面で！！ (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます！先刻アップさせていただきましたのでご確認ください ！！ ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます！これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております！ (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時：2016年6月14日 21時
