【d!】君の最期【短編集】 (ページ3)

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彼女が死んだ。
生きるのは難しい病気で、普段は薬で抑えてたんやと。

─── 写真があれば、いつだって思い出せるでしょ？

彼女の言葉が思い出される。
まさか死ぬなんて。やっぱり病室の写真は…。

「分かってたんやな、死ぬの。」

彼女の母親から封筒をもらった。
中には、文字の一部が滲んだ手紙とUSBメモリ。
パソコンに繋いでみたら、かなりの量の写真があった。

「言うてくれてたら…俺も協力したのに。」

もう画面の中にしか存在しない彼女に言う。

「眉間にシワ寄せた写真なんかじゃなくて、笑顔でさ。」

戻ってこない、触れられない。
そう思いながらも画面に手を添える。

「写真以外にもあったやん。ビデオとか。」

彼女からは一度自分が映ったビデオを撮らなかった。
姿は写真で思い出せる。じゃあ、声は？

「確かに、写真があれば思い出せるよ。」

でも月日がたつにつれ声は思い出しにくくなる。
だって彼女の声は、俺みたいに特徴的でもなかったから。

「でもな、思い出だって薄れていくんやで。あほ。」

ぽとり、キーボードに雫が落ちた。

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