2ヵ月キログラム 1

自覚なし 1 ページ45

なんだよ。

別に好きとかじゃないって言ってんじゃん。なんであんな決めつけんの。なんであんなきつく言われなきゃなんないの？トミーの推測にしか過ぎないのに。

そう思ってた。

でもたしかに、トミーの｢なんで写真撮ったんだよ｣って質問は引っかかってて。

言うならおれ、Aちゃんに関しては色んな瞬間、写真撮りたいって思うもんね。たとえば昨日の夜とか。

俺のMVを観てべらべらと語ってから、我に返って恥ずかしそうに口を抑える、揃った指先とか、

眠そうなくせに動画もうちょっと観たいですって言う、わがままな横顔の、尖らせた唇の角度とか、

寝落ちしかけたまつ毛の影とか、

そういう、なんでもないことを。

――ほんと、なんでなんだろ。

おれにとって、写真は特別なものじゃない。あ、いい、と思ったら割とパシャパシャ撮る。
確かにそれは景色が多くて、人に対してこういうことを思うのはないけど。

でも、それは、好きとは違う。

好きっていうのは、多分もっとドキドキして、なんか、尊い？崇高な感情ってやつ？恋愛あんましてきてないからよくわからんけど。

とにかく、恋愛と呼ぶには身近すぎる。

今日はAちゃんはおやすみで、そういうことを考える時間が死ぬほどあった。

ト｢ねえ、香川の特典の撮影だけどさ｣

カ｢あ、うん｣

ト｢その前にAERAの撮影やんなきゃで、――｣

スケジュールの説明を聞きながら、トミーと共有してあるスマホのスケジュール帳を追っていく。じゃあここまでには何本撮影で、この日は1日中編集やりたい、とか、トミーとすり合わせをしていく。

一通り終わったところで、おれ考えたんよ、と切り出してみた。

ト｢ん？なに？｣

カ｢なんでAちゃんの写真撮ったのか｣

ト｢ああ、うん｣

カ｢でもやっぱ、恋愛みたいなその、徳の高い感じじゃない。おれの作品を見て喜んでるってのが、こっちも嬉しいってだけなんよ｣

ト｢徳の高いって｣

イヒヒ、とトミーが笑う。真面目なの！とちょっと大きい声を出すと、わかってるわかってる、とトミーが口を手で覆った。

ト｢前も言ったみたいに、俺はお前がそうならそれでいいんよ、俺の勘違いだったんだなってだけ｣

カ｢でしょ｣

真面目な話をする時、おれらはお互いの顔をあまり見ない。

ト｢また俺の見解になっちゃうけど、2点気になる点があるんだわ｣

カ｢おう、言って｣

でも今回は、最初から最後まで目を見て聞こうと思ってる。

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