2ヵ月キログラム 1

きまぐれクック3 ページ24

『いっぱいもらっちゃった……』

食べきれなかったチャーハンとステーキの半分、そして｢野菜食えよ、まじーから俺は食わんけどな｣と言う富永さんからサラダをタッパーにもらって、家までの道を歩いていた。

実はちょっと、いやかなり凹んでいた。

昨年、両親が交通事故で他界してから、食欲が失せたのはなんとなく体感していた。

でも自分がショックを受けてるって、ちゃんと向き合うのが怖くて、向き合ったらどんどん落ちて行ってしまいそうで、目を背けていたのだ。

別に痩せてもないし太ってもない、標準体型のつもりで体重計に乗ったら、周りが話題にできないくらい痩せてしまっていて。

両親とか、両親との思い出とか、一緒に歩むはずだった未来とか、悼む気持ちとか、そういう色々が、体重と一緒に全部なくなった気がした。

でも一緒に、悲しいとか寂しいとかも、体重と一緒に削ぎ落とした気がする。だから、ここまで心が破綻せずに来れた。そんな気がしている。

もし、両親といた時のように体が健康に戻ったとして、両親がいない食卓で私は耐えていけるのだろうか。

心と体の間に、脂肪みたいに｢つらい｣が溜まりすぎて、皮膚が破けて傷になって治らなくなってしまったら、どうすればいいのだろう。

そんなことを、思っていた。ごま油のいい匂いがするまでは。

白と黒のしましまエプロンを身につけ、大盛りのチャーハンをドンと置いた寛太さんは、格好に似合わずかなり真剣だった。ダイエットしてるのか、とか偏食なのか、とか色々聞いてくれた。

そして、元気でいて欲しいよ、と、真面目な顔で、ニヤけも、恥ずかしがりも、茶化しもせずに、そう言ってくれたのだ。

皮膚が破けてしまったら、寛太さんに見せてみよう。それはとても勇気がいるし、できるかわからないけど、きっと絆創膏を貼ってくれる。

玄関のドアの前でちょっと立ち止まって、そんなことを考えていた。

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