Fischer's- (短編集)

ごめんね？ ♯1-モトキ- ページ4

数時間前の出来事。

私は一人本屋さんへ雑誌を見に来ていた。



結衣『…うーん、どんな服が良いかなぁ。』



明日は大好きな彼とのデート。
服選びにも気合いが入ります！！



結衣『よし！決まった！』


数ページ、ペラペラと捲っては
気に入ったので雑誌を片手にレジへ向かった。


会計を済ませ本屋から出ると、
聞き覚えのある声がした。


誰だかなんて…


その声の元へ目を向けると
愛しいモトキの姿が。


私が声を掛けようとした瞬間、



結衣『モト………っえ？』



一瞬混乱した。
受け入れる事が出来ずに、
慌てて目を逸らした。


聞こえてくるのは明らかに愛しい人の声。


しかし、その隣に居たのは
見知らぬ長い髪の女の子だった。


鼓動が早くなる、

呼吸が浅くなる、


居ても立っても居られずに私はその場から逃げるように家に向かった。



家の鍵を開け部屋に入るなり
その場に泣き崩れた。




結衣『なん…、どうして…ッ…うッ…。』



堪え切れず止め処なく流れた涙は
服の袖口を濡らした。



それから数十分後、
気付けば私は泣き疲れ眠ってしまっていた様だ。


重い足取りで鏡を見れば、
赤くなった鼻にパンパンに腫れた目蓋、真っ赤に充血した瞳。



結衣『…………酷い顔。』



思わず失笑した。



その時、
一本の電話が鳴った。

この着信音は………


結衣『……………モトキ、』



怖かった。
何も聞きたくないと、心の底から思った。


でも、
このままシラを切ることは出来なかった。



恐る恐る携帯を手に取り通話ボタンを押した。




結衣『………もしもし』



モ「あ、結衣？…俺…だけど、…どうした？」




鋭いと思った。
まだ何も言っていないのに、
彼は私の違和感に気付いた。




結衣『あの、…さ…今日、




言いかけた時だった。




モ「あ！もう着くから切るね？」




結衣『え？…ちょっ！？』




ツーツーツー…



突然電話は切られ、
それと同時にインターフォンが鳴った。

慌ててインターフォンを取ると、
そこにはモトキの姿があった。

直ぐ様マスクを付け、
赤みのある瞳は目薬で誤魔化し出迎える事にした。


重い扉を開き、彼の第一声は…




モ「………ごめんね？」



理解する事が出来なかった。


何に対して謝っているのか、

そして今…私の目の前には
可愛くラッピングされている小さな箱がモトキの手の中に。

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