Fischer's- (短編集)

【リ】…彼奴は狡い。♯1 -モトキ先生とマサイ君- ページ21

結衣『行って来まーす。』


私は学校に向け歩き出した。



シ「おっ先ー！！」

ン「また後でねーっ！！」



後ろから自転車で私を抜いて行く。



結衣『ずる〜いッ！！乗せろーっ！！』



遠ざかる後ろ姿に私が膨れて居ると、



マ「…乗ってく？」



自転車に跨るマサイ君が私の隣で止まった。



結衣『え、…い、良いの？』


マ「おぉ！！」



私はマサイ君の後ろに座ると、
控えめに腰に捕まった。

そして私達は
シルク達の後を追う様に学校へ急いだ。



無事学校に到着し、
私はマサイ君と共に教室の戸を開いた。



シ「お、マサイに乗せてもらったのか？」


ン「ヒューヒューっ！！」


結衣『もぉー、別に良いでしょっ！！』



私は恥ずかしくなり頬を赤くした。


すると、



マ「お前らなッ！……なんか、ごめんな？」




マサイ君は何時も優しく私をフォローしてくれる。


私は大きく首を横に振った。


そんな賑やかな教室に静寂が訪れる。



モ「ほーら、席に着けー。」


モトキ先生は生徒からの信頼も厚く
卒業迄に皆んなとの距離を縮める為
一人一人生徒を下の名前で呼ぶなど、
とても素敵な先生だ。



モ「…………て事だから、結衣さんは放課後残る様に。」


結衣『へ？…あ、ごめっ…シルク、今なんて言ってた！？』



私は隣の席のシルクに小声で問い掛けた。



シ「は？ちゃんと聞いとけよっ！お前放送委員会だろ？放課後その説明するから残れって。」



結衣『あ、把握。…あれ、でもマサイ君は？マサイ君も放送委員だよね？』



シ「さぁ？彼奴は前回もやってたから説明いらねぇんじゃねぇの？そんなん知るか！！」



マ「………。」




俺は密かに結衣に想いを寄せている。

だからこそ、
俺は周囲の反応には敏感で。


モトキ先生は多分……



( 結衣の事………。 )



だから俺の事を敢えて呼ばなかったんだろう。


先生がその気なら…


マ「……俺だって。」






モ( 悪いけど、君には譲らないよ。 )


教室の扉の前、
賑やかな教室の中一際目立つグループの中に結衣は居る。


頑張り屋で、
君の周りはいつも笑顔が絶えない。


俺はいつの間にか1人の生徒に
生徒以上の感情が芽生えていた。



シ「お、マサイに乗せてもらったのか？」


ン「ヒューヒューっ！！」


結衣『もぉー、別に良いでしょっ！！』



俺はマサイが結衣に想いを寄せているのを知っていた。



( これは、卒業迄待てないな… )

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