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マフィア幹部の独白・一 ページ8

昨日は善い日だった。

車のハンドルを握りながら、中原中也は一人ごちる。
信号で止まった隙に、鞄から数枚資料を取り出した。軍警に奪われてはならない、重要な資料だ。

『A・フーケ』

そこに刻まれた名は、間違いなく昨日の青年のもの。中也は無意識のうちに舌なめずりしていた。

『A・フーケ 21歳
 現職業・アイドル、俳優
  −−−−能力名「水妖記」』

A青年は異能者なのだ。

異能者所帯であるポートマフィアにとって、強力な異能の確保は最大にして最重要の課題だ。だから、力さえあれば貧民街の孤児も拾うし、光の世界の者を力ずくで闇に引きずり込む。
しかし、その勧誘の仕方がまた難しいのだ。特にAのような有名人は−−。

けれど彼は、自ら闇に飛び込んできた。

あの強力な異能が他組織に奪われていたら−−そう思うとぞっとする。
『水妖記』は、精神操作の異能だからだ。

『中也くん、今回は君でも難儀するだろうねえ。けれど組織のためだよ、やってくれるね』

首領、俺、やりましたよ。小さくガッツポーズを作った。
と、その時、信号が青になった。再び走り出す。

Aは助けてやると云えば簡単に懐柔できた。今は中也の部屋で大人しくしている。
彼が『闇に足を踏み入れた』ことに気がついても、騒ぐ訳にはいかないだろう。何故なら、それは『自らが望んだこと』だからだ。
その上、アイドルがマフィアと繋がりを持っていたなんてスキャンダルでしかない。

闇から逃げたつもりが、深みに嵌まり込んでいる。

上出来過ぎて、中也はいささか興奮していた。自分の押し進めた計画が巧くいった。鼻歌を歌ってしまいそうなくらいだ。

……けれど。
一つだけ、中也には不思議なことがあった。−−自身の感情について。

雨の中、Aに話しかけた時。確かに自分は思っていたのだ。

助けてあげたい、と。

◇◇◇
毎回長くてすみません……
夢主くんの元ネタが分かる方がいたら嬉しいです♪

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こんぺいとうくん(プロフ) - コミュ障の極みさん» ありがとうございます〜!!頑張ります!DA、中也さん格好良過ぎでした… (2018年3月16日 21時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
コミュ障の極み - デッドアップル観れなかったァァ!あと面白いです!更新ファイトです! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 0c405ae39e (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとうくん(プロフ) - 真昼さん» あ、あ、ありがとうございます…!(コミュ障)すごい嬉しいです…頑張ります!! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - すごい面白いです、頑張ってください! (2018年3月9日 23時) (レス) id: 85666cc382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとうくん | 作成日時:2018年1月29日 17時

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