辞職の話・一 ページ6
僕は本当に幸運だったのだと思う。
この闇の渦巻く魔都で、こんなにも優しい貴方に出逢えたのだから。
とにかく、正常な判断力を失っていた僕の生は、逢ったのが貴方でなかったならば、終わっていてもおかしくはなかった。
「…………」
「起きたか」
僕は最初、自分のいるところを不思議に思った。厚い毛布にくるまって、睫毛の先まで窓から差し込む陽光に暖められている−−陽光だって？
僕は跳ね起きた。それと同時にかけられる、「お早う」という声。
寝坊した−−と思った。そして、
「な、中原さん……お早うございます……」
「中也で善いぞ」
貴方がいたことを思い出した。
貴方は昨日と違って、ジャケットの代わりにエプロンをつけていた。既に整っているその姿に、僕は恥ずかしさを覚える。何せ僕はスウェット−−貴方の物なので、サイズがあっていない−−だし、寝癖もついている。
「飯でも食おうぜ」貴方はそう云って椅子から腰を浮かした。「食いながら話きくからよ」と。
それにしても、と僕は思う。何て豪華な家だろう。特別な仕事でもしているのだろうか？
けれど、食卓の上には庶民的なご飯が並んでいた。凄い、優しいだけじゃなく、料理もできるなんて。
「頂きます」
「……い、頂きます……」
箸をつける。口に入れると、優しい味が広がった。
「お、美味しいです……！」
「そうか。どんどん食えよ。……ところで」
貴方は姿勢を正した。
「事情を聞きたい。手前は何で、あんなところに一人でいたンだ？」
「……それは……」
僕は昨日のことを訥々と話した。そして自分の『もう一つの名前』も。
「……手前、あの【Frida】か……」
「今頃、母も軍警も、僕を躍起になって探してると思うんです。……でも、僕……うちには、戻りたくないので」
貴方に受けたご恩は忘れません。僕はそう云って、頭を下げた。これ以上ないというくらいに深々と。
「それで……どこか、行くあてがあンのか」
「それはない……ですけど」
「じゃあどうするってンだ」
僕はもう、その時には覚悟を決めていた。身体を闇に浸してでも、母から逃げおおせてやると。
けれど彼は、それが気に入らなかったようだ。「いや、だめだ」
そして、二度目の驚きの発言をしたのである。
「ここに住め」
……昨日から、想定外のことが多過ぎる。
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こんぺいとうくん(プロフ) - コミュ障の極みさん» ありがとうございます〜！！頑張ります！DA、中也さん格好良過ぎでした… (2018年3月16日 21時) (
レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
コミュ障の極み - デッドアップル観れなかったァァ！あと面白いです！更新ファイトです！ (2018年3月15日 18時) (レス) id: 0c405ae39e (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとうくん(プロフ) - 真昼さん» あ、あ、ありがとうございます…！（コミュ障）すごい嬉しいです…頑張ります！！ (2018年3月10日 15時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - すごい面白いです、頑張ってください！ (2018年3月9日 23時) (レス) id: 85666cc382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとうくん | 作成日時：2018年1月29日 17時
