【問答打】漢字三字。【短編集】

急接近#izkm ページ3

「…川上、」
駅の構内でふと呟く。
急に彼の顔が頭に浮かんできた…訳では無い。
居たのだ。駅に。彼が。
改札を抜けた後に目に留まってしまったのでぴた、と足が止まった。
後ろからの人の波に流され彼の姿は一度見失ったが。

「…伊沢さん、」
駅の構内でふと呟く。
急に彼の顔が頭に浮かんできた…訳では無い。
やっと見つけたのだ。改札口から出てくる彼を。
あちらは俺に気づいていないようだし、もう少し近くに来るまで待っていよう。

え、待って待ってどういうこと？俺が帰ってくるのが待ちきれなくて自分で来ちゃったみたいな？ほんとに？そういうことなの？
…流石に俺の恋人可愛すぎませんか。
このままスルーしたらダメかなあ、今会ったら可愛すぎて顔真っ赤になる気しかしないんだけど。
心臓が早鐘のように鳴っている。
落ち着け、落ち着け俺。

スマホに視線を集中させているようで実は伊沢さんの動きをちらちらと見ている。
あ、立ち止まった。
手を顎に置いてなにか考え事でもしているのだろうか。
「ふふ、かわいい」
つい笑みがこぼれてしまう。
だめだだめだ、彼にはかっこいい俺を見せないと。

彼がくす、と笑ったからその表情を凝視していたら目が合った。
…気がする。
やばいやばい気付いてるのバレたかも。

彼が思考の際の仕草をやめたので見つめていたら目が合った。
…気がする。
もしかしてずっと気付いてた…？

彼の所へ走り出す。
どんどんと彼との距離が近くなって、彼の目も大きく見開かれていって。

彼が走り出した。
どんどんと彼との距離が近くなって、驚きで目が見開かれてしまって。

「川上、」
「伊沢さん」

「ただいま」
「お帰りなさい」

いつだって近くにいたいのが、貴方なんだ。

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