【リレー小説】この無慈悲な世界に能力で希望を【第四章】 (ページ44)

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認めないよ。姉として。【叶胡天秋/天秋】ページ44

「っう…。」

わたしは、いつの間にか気を失ってたみたいだ。

目を開けると、眠っているいのりさんが視界に飛び込んでくる。

「あ…れ？」

違和感。

何かが、頭からすっぽり抜け落ちているような気がした。

必死に手繰り寄せて、思い出そうとする。

わたしには…妹がいて…

その子は…拐われて

それで…それで…

その子の…名前は…？

笑顔が、わたしとよく似てて

華みたいだって皆は言ってた…

だから…わたしが名前をつけたんだ

名付けてくれなかった親の代わりに…。

あの子の…名前…。

思い出せ…思い出せっ…。

て…か…

て…い…か…

てい…か…

帝華…？

思い出した…！

頭痛は酷かったけど。

改めて、外の様子に耳を澄ませる。

「…!でも、貴方の姉は…!!」

「ああ、移植するよ。俺の寿命が１ヶ月になるだけだ。」

そんな会話が、耳に飛び込んできた。

ったく、馬鹿妹。

「自分が死んだら、わたしも後を追うかもしれないって考えはないのかな？」

発作の苦しみは、一生背負うつもりだ。

辛いし、苦しいけど

それを誰かに押し付けるなんて言語道断。

「むしろ、今日生きてるのが奇跡なんだよ。」

能力でも治せない。

有名な医者でも治せない。

医者にかかれば、帰ってくる答えは

いつだって「否」で。

「だからって、それを妹に背負わせるわけがないでしょ？」

移植？そんなの

姉として、認めないよ。

いのりさんに毛布をかけ、そっと別の部屋に移す。

枕元には、彼岸花を置いた。

「いのりさん。

本当に、ありがとう。」

わたしは、わたしの部屋に入って、全体を蔦で覆った。

わたし一人が入れるスペースを残して、部屋中ぎっしり。

どんな能力を使っても、どんな方法を使っても、この蔦を消すのには最低で(・・・)10日かかる。

あぁ、カイさんが妖さんを生み出した意味、一緒に探せないなぁ…。

小さなスペースに、膝を抱えてうずくまる。

左胸は、薬が切れたのか痛みを増していた。

でも、それでいいよね。

わたしは

死ぬために、生まれてきたんだから。