検索窓
今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:19,858 hit

九十六 ページ7

.



(何とか動けるかな)



痛む腕を抑えながら立ち上がる。
部屋の端には硝子の破片が散らばっている。
いずれ、犯人が事態に気づきここに戻ってくるだろう。
あまり時間がない。

壺の後ろに隠れた箱を前へと引き出す。
タイムリミットまで十数分。
胸元に入れた簡易的な工具を取り出して、蓋を開ける。
中は配線が張り巡らされている。
専門的な知識がなければ、簡単に解体できないだろう。

携帯を取り出し、電話をかける。
相手はコール音を待たずにすぐに出た。

 


「Aさん!!大丈夫ですか?!」




山崎は大声を上げ、名前を呼ぶ。
しっと声を掛け、小さな声で話を続ける。



「大丈夫ですから落ち着いて下さい。犯人が戻ってきてしまうかもしれないので静かにお願いします」



「わわ…すみません。現在の状況は?銃声が聞こえましたが…」




「ええ、実は」




端的に状況を伝えると、山崎の声色はだんだん沈んでいく。
しかし、目の前の状況を聞いた途端、驚きの声を上げた。




「爆発するまであと少しです。早く解体しないと」




「じゃあ、爆弾処理班を今からそちらに」




「駄目です。屋敷内にはカメラが張り巡らされています。



私達以外の隊士が入っていくのを見たら、起爆スイッチを押し兼ねません」




「じゃあ、どうやって…」




携帯電話を耳から離し、絡んだ配線を写真に収める。
それを山崎宛に送信して、




「私が解体します」




そう言い切った。
反対されるのは目に見えている。
言い返される前に、




「大丈夫です。撃たれたのは利き手ではありません。



その写真を元に、処理班に解体方法を指示して貰い、私が行います。



誰も入れない鉄壁の屋敷の中で、今やれるのは私しかいません」




強く言えば、奥で喉が鳴る音が聞こえた。




「きっと土方さん達は犯人を捕まえてくれます。



だから、








私が絶対に土方さん達を救います」





きっぱりとそう言い切って、唇を舐める。
山崎は覚悟を決めたように小さく何かを呟いた後、




「一番隊、A隊士。





至急、爆弾処理を命じます。






必ず、三人で帰ってきてくださいね」





山崎の言葉に頷いて、前の箱に視線をやる。
時が刻々と刻まれるそれに、





「大丈夫。絶対、やれる」





工具を見せつけた。
不意に早くなる鼓動と冷や汗に、今の状況がやはり現実であることを認識させた。


.

九十七→←九十五



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (61 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
163人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 真選組 , 土方十四郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Nattu(プロフ) - ももさん» すみませんお返事遅くなりました;;レスありがとうございます嬉しい;;ゆっくりではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。引き続き読んでいただき誠にありがとうございます。* (2022年9月9日 0時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - こちらこそ、返信ありがとうございます!早速読まさせていただきます。再開おめでとうございます!!! (2022年9月4日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ももさん» 初めまして!コメントありがとうございます!いつも更新を楽しみに…なんて凄く嬉しいお言葉ありがとうございます;;嬉しい〜;;また再開したので遊びに来てくださいいい!ももさんに出会えることを楽しみにしています* (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さ〜ん!またコメントくれて本当に嬉しいです;;また再開致しましたのでお付き合いいただけたらと存じます。慎さんとまた会えて嬉しいです;; (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初コメ失礼します。本編では大変楽しく読まさせていただき、いつも更新を心待ちにしていました!また、短編を作り始められましたら、ぜひ読みたいです! (2022年8月30日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月30日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。