九十六 ページ7
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(何とか動けるかな)
痛む腕を抑えながら立ち上がる。
部屋の端には硝子の破片が散らばっている。
いずれ、犯人が事態に気づきここに戻ってくるだろう。
あまり時間がない。
壺の後ろに隠れた箱を前へと引き出す。
タイムリミットまで十数分。
胸元に入れた簡易的な工具を取り出して、蓋を開ける。
中は配線が張り巡らされている。
専門的な知識がなければ、簡単に解体できないだろう。
携帯を取り出し、電話をかける。
相手はコール音を待たずにすぐに出た。
「Aさん!!大丈夫ですか?!」
山崎は大声を上げ、名前を呼ぶ。
しっと声を掛け、小さな声で話を続ける。
「大丈夫ですから落ち着いて下さい。犯人が戻ってきてしまうかもしれないので静かにお願いします」
「わわ…すみません。現在の状況は?銃声が聞こえましたが…」
「ええ、実は」
端的に状況を伝えると、山崎の声色はだんだん沈んでいく。
しかし、目の前の状況を聞いた途端、驚きの声を上げた。
「爆発するまであと少しです。早く解体しないと」
「じゃあ、爆弾処理班を今からそちらに」
「駄目です。屋敷内にはカメラが張り巡らされています。
私達以外の隊士が入っていくのを見たら、起爆スイッチを押し兼ねません」
「じゃあ、どうやって…」
携帯電話を耳から離し、絡んだ配線を写真に収める。
それを山崎宛に送信して、
「私が解体します」
そう言い切った。
反対されるのは目に見えている。
言い返される前に、
「大丈夫です。撃たれたのは利き手ではありません。
その写真を元に、処理班に解体方法を指示して貰い、私が行います。
誰も入れない鉄壁の屋敷の中で、今やれるのは私しかいません」
強く言えば、奥で喉が鳴る音が聞こえた。
「きっと土方さん達は犯人を捕まえてくれます。
だから、
私が絶対に土方さん達を救います」
きっぱりとそう言い切って、唇を舐める。
山崎は覚悟を決めたように小さく何かを呟いた後、
「一番隊、A隊士。
至急、爆弾処理を命じます。
必ず、三人で帰ってきてくださいね」
山崎の言葉に頷いて、前の箱に視線をやる。
時が刻々と刻まれるそれに、
「大丈夫。絶対、やれる」
工具を見せつけた。
不意に早くなる鼓動と冷や汗に、今の状況がやはり現実であることを認識させた。
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Nattu(プロフ) - ももさん» すみませんお返事遅くなりました;;レスありがとうございます嬉しい;;ゆっくりではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。引き続き読んでいただき誠にありがとうございます。* (2022年9月9日 0時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - こちらこそ、返信ありがとうございます!早速読まさせていただきます。再開おめでとうございます!!! (2022年9月4日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ももさん» 初めまして!コメントありがとうございます!いつも更新を楽しみに…なんて凄く嬉しいお言葉ありがとうございます;;嬉しい〜;;また再開したので遊びに来てくださいいい!ももさんに出会えることを楽しみにしています* (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さ〜ん!またコメントくれて本当に嬉しいです;;また再開致しましたのでお付き合いいただけたらと存じます。慎さんとまた会えて嬉しいです;; (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初コメ失礼します。本編では大変楽しく読まさせていただき、いつも更新を心待ちにしていました!また、短編を作り始められましたら、ぜひ読みたいです! (2022年8月30日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月30日 19時