百十五 ページ26
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『ごめんなさい。今はまだ』
相変わらず真面目な顔をして、彼女は隣を歩いている。
いつもの騒がしい街を巡回しつつも、平和な日常だった。
あの時の告白を受け、Aは少し困った顔をしてその申し出を断った。
彼女の気持ちを知った上で断られ、最初でこそショックを受けた。
『私はまだ、社会人としても隊士としても経験が浅いです。
だから、今土方さんの気持ちを受けてしまうと、おんぶに抱っこ…じゃないですけど、甘えてしまいそうな気がして』
理由を聞いて、ほっとしつつ、Aらしいとふっと笑ってしまった。
おどおどとしながら、こちらを見る彼女に、
『今度はお前が俺を待たせるのか』
と問えば、
『…恐縮です』
と今更になって部下らしい返事。
そんな小さな頭をわしゃわしゃと撫でて、
『焦らしてんじゃねえぞ、馬ー鹿』
歯を見せた。
変わらない関係のまま、今も尚仕事をしている訳だが、もう不安な気持ちも疑うこともない。
保留にされていたとしても、Aが土方を想っていることが分かっただけでも十分すぎた。
それに、彼女にはもう少しすれば、初めての後輩ができる可能性があるとの噂を聞いた。
いつか先輩風を吹かせるAの姿が見れると思うと、嬉しさ半分寂しさ半分で。
「ん?どうされました?」
「いや。お前がいずれ部下を持つなんて想像したら面白えなってな」
「どういう意味ですか」
眉間に皺を寄せ、目を細めて不服そうにこちらを見ている。
そんな彼女がまた愛おしいと思えて、きゅっと胸が萎むような感覚になって。
「さて。そろそろ巡回連絡にでも回るか」
一軒一軒扉を叩き、情報をかき集めて行く。
以前まで女だからと閉め出されることもあったが、もうそれもなくなっていて。
むしろ、土方達が尋ねるよりも柔らかく対応する彼女はより住人達に受け入られていた。
次の区画に移動しながら、Aと雑談しながら歩く。
「やっと巡回連絡も相手して貰えるようになってよかったあ」
彼女は大きく溜息をついて、笑みを溢した。
そんなAに近づいてくる小さな子ども達。
彼らはAに大きく手を振って言った。
「こんにちは!お巡りさん!」
Aは目を細めて、
「やっと土方さんと同じところに立てた気がします」
満面の笑みで、彼らに姿勢正しく敬礼した。
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完.
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Nattu(プロフ) - ももさん» すみませんお返事遅くなりました;;レスありがとうございます嬉しい;;ゆっくりではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。引き続き読んでいただき誠にありがとうございます。* (2022年9月9日 0時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - こちらこそ、返信ありがとうございます!早速読まさせていただきます。再開おめでとうございます!!! (2022年9月4日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ももさん» 初めまして!コメントありがとうございます!いつも更新を楽しみに…なんて凄く嬉しいお言葉ありがとうございます;;嬉しい〜;;また再開したので遊びに来てくださいいい!ももさんに出会えることを楽しみにしています* (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さ〜ん!またコメントくれて本当に嬉しいです;;また再開致しましたのでお付き合いいただけたらと存じます。慎さんとまた会えて嬉しいです;; (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初コメ失礼します。本編では大変楽しく読まさせていただき、いつも更新を心待ちにしていました!また、短編を作り始められましたら、ぜひ読みたいです! (2022年8月30日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月30日 19時