百十 ページ21
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正直なところ、想像以上だった。
「わっ」
竹刀が触れそうになって、思わず彼女はひっくり返った。
「勝負ありだな」
「ははは…急にこられたからびっくりしちゃいましたよ」
眉を下げて笑うAに手を差し出した。
小さな手を控えめに乗せて、彼女はゆっくり立ち上がった。
ついこないだまで怪我をしていたにも関わらず、引けを取っていない。
むしろ、力強さが増している気がする。
腕に巻かれた補助用途の包帯が嘘のようだ。
「もう一戦いきます?」
そう嬉しそうに言う彼女が眩しい。
病室とは違い、生き生きとしながらこちらを見る視線に目を背けたくなるほどだ。
「いや、いい。お前は病み上がりだろうが。ハイペースすぎんだろ」
「だって、嬉しくて」
Aは目を伏せ、足の指を動かす。
見下ろしていると、恥ずかしそうに土方を見上げた。
そして、するりと脇へと逃げていく。
「汗かきましたね。
…また、付き合ってくれますか?」
どこへと言わなくても分かる。
不安げに揺れる黒目が愛おしい。
「ああ。着替えて門の前に集合な」
土方の返事に、Aは周りに花が咲いたかのように満面の笑みになる。
勢いよく頷いて、
「急いで支度します!」
深々と礼をして、走って出ていった。
ばたばたと忙しい彼女に思わず笑みが溢れた。
部屋に向かっていると、襟足の長い部下に出会す。
山崎はいつも怒鳴られてばかりのせいか、びくびくしながら敬礼をした。
「お疲れ様です!」
「おう。お疲れ」
「副長、稽古終わりですか?珍しいですね」
「悪いか、稽古して」
「い、いえ。そう言う訳じゃ」
彼は地雷を踏んだとばかりに狼狽える。
そんな時にもう準備が終わったのか、駆けていく彼女が視界の端に入る。
「あっ。山崎さん、お疲れ様です!」
律儀に立ち止まり、手を上げる。
山崎は嬉しそうに手をひらひらと振った。
「良かったあ。Aさん、戻ってきて。
あんなに元気なとこ見たら、こっちも嬉しくなっちゃいますよね」
上手く返事ができず、黙っていると、
「あっ…すみません。副長の前でAさんを褒め…あっ、いや…」
一人でにどつぼにはまる。
彼が言わんとすることが何となく分かった気がして、
「別に褒めてもらっても構わねえが?」
煽るようにして、言葉を返した。
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Nattu(プロフ) - ももさん» すみませんお返事遅くなりました;;レスありがとうございます嬉しい;;ゆっくりではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。引き続き読んでいただき誠にありがとうございます。* (2022年9月9日 0時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - こちらこそ、返信ありがとうございます!早速読まさせていただきます。再開おめでとうございます!!! (2022年9月4日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ももさん» 初めまして!コメントありがとうございます!いつも更新を楽しみに…なんて凄く嬉しいお言葉ありがとうございます;;嬉しい〜;;また再開したので遊びに来てくださいいい!ももさんに出会えることを楽しみにしています* (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さ〜ん!またコメントくれて本当に嬉しいです;;また再開致しましたのでお付き合いいただけたらと存じます。慎さんとまた会えて嬉しいです;; (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初コメ失礼します。本編では大変楽しく読まさせていただき、いつも更新を心待ちにしていました!また、短編を作り始められましたら、ぜひ読みたいです! (2022年8月30日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月30日 19時