九十壱 ページ2
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本当に人が住んでいるのかと疑いたくなるほどだった。
「悪戯だったんじゃないですかぃ」
つい沖田の言葉に頷きそうになる。
通報を受けここに辿り着くまで、念の為過去の捜査資料を漁ったが皆目検討がつかなかった。
被害者から感謝されるのはあっても、被疑者またはその関係者に恨まれるのは数知れない。
捕まえてくれてありがとう、なんて言う犯罪者はごく稀だ。
「Aはどう思う?」
「えっ?」
「おいおい。注意力散漫になってませんかぃ」
周りばかり見ていた彼女に話しかければ、素っ頓狂な声を上げる。
「今回の通報だ。悪戯かそうでないか」
それを聞いて、Aは少し考えた後真剣な顔をして言った。
「現地点で判断はできません。
だけど、通報があった以上、被害者がいるかもしれないということです。
その可能性を疑わずに向き合う必要があります」
彼女の真摯さが眩しい。
時間の経過と共に忘れていた感覚だった。
経験も知識もまだまだ浅いAだが、こればかりは彼女が正しかった。
「新米が生意気言いやがって」
「本当のことじゃないですか」
沖田はそんなAの耳を掴みながら、眉を顰めた。
今にでも喧嘩になりそうな二人を引き剥がし、鞘に触れる。
「気ぃ抜くんじゃねえぞ。
A。お前のお陰で目が覚めた。
…感謝する」
「は、はあ。どうも」
頭の上に疑問符を浮かべるAの隣で、にやにやと笑みを浮かべる沖田がうざったくなり置いていくようにして先に進んだ。
先に進めば進むほど、暗く視界が悪い。
照明ひとつもついておらず、埃臭い。
その様子に後ろからついてくる二人も黙りこく。
歩く度に鳴る床の音と、かちゃかちゃと鞘の当たる音が廊下に響く。
(…にしても、マジでいんのか?)
Aに言われたものの、何も感じない屋敷に疑ってしまう。
そう、油断した一瞬だった。
「土方さん。
A、着いてきてないですぜ」
振り向けば、沖田の後ろをついていたAの姿はない。
名前を呼ぶも、返事はない。
「あいつ、どこ行って…てめえ、総悟、何で見てなかった」
「土方さん、冷静になって下さい。俺を責めてどうにもなんでしょう。
とにかく、あいつを探しつつ、この神隠しを起こしやがった奴をとっ捕まえましょう」
沖田は土方を払い除け、先導を切った。
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Nattu(プロフ) - ももさん» すみませんお返事遅くなりました;;レスありがとうございます嬉しい;;ゆっくりではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。引き続き読んでいただき誠にありがとうございます。* (2022年9月9日 0時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - こちらこそ、返信ありがとうございます!早速読まさせていただきます。再開おめでとうございます!!! (2022年9月4日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ももさん» 初めまして!コメントありがとうございます!いつも更新を楽しみに…なんて凄く嬉しいお言葉ありがとうございます;;嬉しい〜;;また再開したので遊びに来てくださいいい!ももさんに出会えることを楽しみにしています* (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さ〜ん!またコメントくれて本当に嬉しいです;;また再開致しましたのでお付き合いいただけたらと存じます。慎さんとまた会えて嬉しいです;; (2022年9月2日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初コメ失礼します。本編では大変楽しく読まさせていただき、いつも更新を心待ちにしていました!また、短編を作り始められましたら、ぜひ読みたいです! (2022年8月30日 0時) (レス) @page27 id: 295133b60c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月30日 19時