紺碧の夜兎【陸】

映えって言ったら映え ページ9

「なっ、セクハラだと！？デタラメ言うのは止めよ！」

瞬時に反論する提督だったが、若干青ざめた顔色と流れ出ている冷や汗のせいで説得力などまるでない。
折角命乞い……じゃない、時間稼ぎの抵抗をしてたのに、こんなんじゃ怒って直ぐ様ジ・エンドじゃん！と察して、なんとか失言撤回のために苦し紛れに言葉を紡ぐ。


「そういうデタラメとか言って、周りにも自分にも嘘を吐くのはもう止めましょう！あれは……恥じゃないと思います！あれは、その、━━映えです！！」


………映え？
何言ってんだ、コイツ。みたいな白けた雰囲気が流れる。
ヤバい、苦しい。
苦し過ぎだ。
ホント何言ってんだろうね。
私もわからない。
てか、この白け具合、ヤバいんですけど？
私、この次どうやって繋げばいいんだ！？
超難しいんですけど！？
兎に角この空気をどうにかしなきゃ、と辿り着いた先がイマドキ女子理論だった。
業とらしく驚いた声を上げ、白けた場にヒいた振りを見せる。


「え……ええッ、ちょっと皆さん知らないんですかぁ！？今時女子の間で流行ってる映え！可愛いモノ、美しいモノ、そんなモノを女子達は撮ってシェアするんですよ。時にはちょっと変わったモノとか、気持ち悪いモノとかもありますが、それさえも映えになるんです！だから、提督のセクハラしてるときのあのみっともない顔！これ以上ってないほど緩んでいて、気持ち悪かった。それ、映えです！」


……言い訳が、苦しい。
苦し過ぎるよぅ。
それぽっい事を捲し立てて、最後、キリって自信満々げにキメ顔で終わらせたけど。
それにしたって、イマドキ女子でも絶対アホ提督のあの顔見て、映えとは思わねーよ。
だが、イマドキ女子特有の謎感性を利用……悪用した熱弁は奇跡的にアホ提督の心を動かしたらしい。


「映え、なの？」

「映えじゃねーよ！！」


揺らいだ様子で問い掛けるアホ提督に、すかさずワンワンからの突っ込みが入った。
周りからもちげーよとか、こんなん映えに疎いヤツでもわかるわとかいったワンワンに同調する声や、頷きが返ってくる。
煩いぞ、むさい男のお前達に女子の何がわかるってんだ。

誰だってメインディッシュになりたい→←味方同士の潰し合いとか見れたもんじゃないよね

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す