紺碧の夜兎【陸】

逃げ道は潰しとけ ページ13

それは、ワンワンが立派な革張りの椅子に足を組んでドヤ顔で偉そうにふんぞり返っている写真だった。
しかし、これが何だと言うのだ？
事情を知ってるらしい当のワンワン以外、場の殆どが写真の意味が分からずに困惑にざわめいた。だが、その答えは直ぐに明らかとなった。


「あああああああ！！」


提督が何かに気付いて、画像を指差しながら叫び声を上げた。
なんだなんだと皆の注目が提督に集まる。


「匂狼よ、これはどういうことだ！！この椅子はワシの椅子ではないか！！」

「いや、これは………」


提督から言及され、ワンワンはしどろもどろになりながら苦悶した様子でごにょごにょと口ごもる。
はっきりと答えないワンワンに代わってやろうと碧は口を開く。


「わー、アホ……じゃなくて、提督大正解。これは、提督がちょっと席をはずした間に提督の椅子に座って座り心地と気分を味わってるワンワンの写真です」

「き、貴様……ッ！！」


口を挟んで余計な経緯まで暴露した碧に、ワンワンが恨みのこもった目で睨み付けてくる。
しかし、すぐにアホ提督の方を向いて弁明に励む。


「ご、合成だ！提督、これは私と提督との信頼を壊すために奴が仕掛けた罠です！断じて覚えなどありません！」


力強いNOを説くワンワンに、碧はすました表情でひょいと証拠を叩き付ける。


「椅子に乗った時の感想」

『フン、あのアホ提督め、毎日こんな良い椅子に座ってやがったのか。アイツには勿体無ェな。宝の持ち腐れもいいとこ━━━』

「うおおおお！！！」


これはヤバいと察したのか、ワンワンは録音音声を自分の声で掻き消した。
言い逃れという道筋さえ潰し、完膚無きまで叩きのめした少女に、うわぁ……と誰もが恐怖を抱いたのだった。

約束事は細かいとこまで突っ込め→←相手より一つ先を読め

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