八 ページ8
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すっかり日も落ちてしまい、外はすっかり静かになってしまった。
到底まだ仕事は終わりそうにはない。
「終わる気しねえ…」
上司は愚痴を零しながら、仕事をする手を止める。
しまいには携帯電話を触り始めた。
(アンタの仕事でしょうか)
ここにきて、憂鬱なことばかりだった。
最初こそ、新天地で頑張ろうとやる気はあった。
蓋を開けてみれば、終わらない仕事と部下任せの上司。
今まで組織の第一線として勤めてきた身だったこともあり、億劫だと感じてしまっていた。
「そういやさ、お前の元上司ってやつがいたんだけど」
「元上司?局長ですか?」
そう尋ねると、男は首を横に振る。
そして、眉間に皺を寄せる。
指先で机をとんとんと立てながら、口を尖らす。
「鬼の副長ってやつだよ」
(えっ…土方さん?)
「なんつうか愛想がないっつうか…俺に挨拶もなしによろしくって」
上司の言葉は聞こえていなかった。
事前に彼らが来ることは聞いていない。
携帯電話を見てもその連絡もない。
きっと偶然だったのだろうが、
(顔くらい、見せてよ)
彼に会いたいと思う自分がいた。
あの一件以降、土方とは話すどころか連絡も取っていない。
自分から言ってしまった以上、連絡をする勇気もなかった。
「…そう、ですか。土方さんらしいですね」
言葉を詰まらせながら、作業する手を進める。
男は眺めるようにして、Aを見ていた。
「お前、ここにあんま来たくなかったんだって」
「…まあ。自分が出した訳じゃないですし」
「優秀なやつは大変だねえ」
彼は嫌味ったらしくそう言って、Aの手に触れた。
驚いて男を見れば、何事もないように首を傾げている。
「ま、俺にとっちゃあ、好都合だったわけだ」
経験の少ないAでも分かる。
彼は自分にとって望まない感情を持っているのではないだろうか。
くっついた手をぱっと離して、すぐに書類に戻す。
男は面白くなさそうに、ふんと鼻を鳴らす。
そんな時だ。
『着信:土方さん』
「す…すみません、電話出てきます」
その場から逃げ出すようにして、慌てて外に出る。
携帯電話を見て深く一息。
そして、覚悟を決めて出れば、
「遅え。3コールまでに出るのは鉄則だろ」
久しぶりに聞いた声に、涙が滲んでいた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時